No.20190914「バンダナ先生の2019 日本ハイパーサーミア学会回顧録」

今回は、バンダナ先生の真面目な学会発表の模様をブログにしてみました。

 

まず、講演会ではバンダナをしますが、学会発表ではバンダナはしません。

 

(あいつ、“変“と思われるので)

 

「ハイパーサーミア」は聞きなれない言葉かもしれませんが、日本ハイパーサーミア学会は“がんの温熱療法”の学会です。この学会の特徴は、温熱治療機を使用してのがん治療に携わる医師のみでなく、温熱治療機や温度測定技術を研究している理工学系の研究者、がんやがん治療に関する

 

分子生物学や免疫系の基礎研究者、がん患者さんの温熱治療をサポートする看護師、温熱治療機を操作する技師、と非常に多くの分野の人々が集まる学会です。学会員430名ほどのマイナーな学会ですが、今年は、967日、埼玉県川越市のウエスタ川越で開催され、参加者約380名と例年になく多くの参加者でした。

 

私の研究は、ハイパー(高い温度)ではなくマイルドな温度よる温熱治療なので、さらにマイナーな研究になります。しかし、一般の方には、身近なお風呂の4042℃での研究なので非常に日常的な研究です。日本では、あまり日常的な研究は軽視される傾向にありますが、それにもめげず(ちょっとめげる時もある)、ヒートショックプロテイン (HSP) を増加させるマイルド加温療法とHSP入浴法の研究を続けています。

 

 今年は。第36回大会でしたが、私は、この学会がまだ研究会だった頃からの会員で、ずいぶん前から代議員になっており、シンポジウムやワークショップ、一般演題と良く発表したり座長をしたりと真面目に参加してきました。ふと思い起こすと、毎年学会発表をしており、なんと「皆勤発表賞」ではないかと思います。愛知医科大学所属のピーク時には約20の学会・研究会に所属し、年間大・小約15演題発表してましたから、結構なペースです。論文を書いたり、勉強するのはあまり好きではありませんが、実験が大好きでしたので、学会前は徹夜もしばし、私の場合、体力75、能力25で研究生活を乗り切ってた感じです

 

 さて、本題の日本ハイパーサーミア学会ですが、今回は2演題発表しました。

 

1.HSP入浴法の継続は身体機能を高め、生活の疲労や危険を軽減しQOLを高める」

 

(株)バスクリンと昨年実験した共同研究です。

 

HSPを増加させるHSP入浴法を週2回、3週間継続する実験です。今まで、1回入浴の様々なHSP入浴法を検討してきましたが、健康維持のためには、やはりHSP入浴法を継続し習慣化することが重要と考えHSP入浴法を3週間継続しました。

 その結果、

1)リンパ球中のHSPが増加する、

2)血管の硬さが減少(血管の弾性が増加)する、

3)右手握力が増加する等、身体機能が向上し、

4)危険マーカーである血漿HSPが減少する、

 5)体力テスト後の疲労が軽減する、

6)心理テストPOMS2の緊張が低下する、

 

自己疲労度チェックで疲労が軽減するなど精神的疲労や危険が軽減します。

 

すなわち、HS入浴法を週2回、習慣化して実践していると身体機能も向上し、精神的にも安定し日常生活のQOL(生活の質)が向上するという結果です。

 

是非、みなさんもHSP入浴法を習慣にしてください。

 

2.マイルド加温療法併用による低用量抗がん剤治療の有効性の基礎と臨床」

 

 愛知医科大学時代からの基礎実験と臨床研究の総説的発表です。

 

膀胱がん細胞をマイルド加温(4042℃)で加温すると、通常量の抗がん剤の1/10量でも通常量の抗がん剤と同様のがん細胞死滅効果が得られるという基礎実験と膀胱がん患者さんの抗がん剤治療にマイルド加温を併用すると抗がん剤のみの奏功率45%が83%に増加するという臨床研究の報告です。患者さんへのアンケートでも、QOLの向上80%、副作用軽減94%とがん患者さんにとっても優しい抗がん剤治療だったという結果です。

 ハイパーサーミアの温熱治療機はなん千万と高価な機械で人手も必要ですが、マイルド加温装置は数十万の安価な装置なので、一般のクリニックでも容易に実施可能です。

 

また、副作用が軽減されるので、高齢者や体力のない患者さん、緩和ケアの患者さんでも適用できます。是非、一般のクリニックでもマイルド加温療法を併用した低用量抗がん剤治療を実施していただきたいと願っています。医療面では医療費削減、患者さんにとっても、高額な抗がん剤治療費が軽減されます。

 

3. 「ハイパーサーミア併用した低用量抗がん剤治療」の第一人者赤木純児先生

 

今年の学会での私の第一の目的は、3.の臨床研究を実施している赤木純児先生(玉名地域保健医療センター)とお会いすることでした。

 

赤木先生は免疫が御専門で、日本ハイパーサーミア学会には所属していませんが、シンポジストとして「ハイパーサーミアによる免疫誘導」というタイトルで御発表でした。私の発表2.も聞いて下さり、ラッキーでした。

 

 実は、赤木先生は、ハイパーサーミア(マイルド加温療法でも良い)を併用すると、抗がん剤の量を1/31/4で標準量と変わらない臨床効果が得られると報告なさっており、その元になる基礎実験が、私の2.の発表での細胞実験で、4042℃のマイルド加温を併用すると1/10量の抗がん剤でも常用量と同様の効果があるという論文(Itoh Y. et al :Experimental Therapeutic Medicin.1:319-323,2010)だったのです。それを、赤木先生は臨床で実際のがん患者さんで実証してくださった、御高名な先生です。

 

 「なぜ、ハイパーサーミアやマイルド加温を併用した低用量抗癌剤治療が普及しないのでしょうか」、と赤木先生にお尋ねしたら、『ガイドラインがあるからでしょう。ガイドラインに反して治療するのは、かなりの勇気と信念が必要です』と。保険診療での抗癌剤治療はガイドライン(指針)に添って行いますので、どこの病院で抗癌剤治療を受けても同じです。逆に言えば、このガイドラインで治療していれば、ほぼ安全ということです。もし、低用量で実施し、効果が無かったら、ガイドラインに反したからということになりかねません。通常量でも効果が少ないのに、低用量なんてとても無理、という場合は、通常量抗がん剤にマイルド加温を併用すれば、より効果が認められるので、どちらにしてもマイルド加温を併用して欲しいと願っています。

 

**診療ガイドラインとは、医療現場において適切な診断と治療を補助することを目的として、病気の予防・診断・治療・予後予測など診療の根拠や手順についての最新の情報を専門家の手で分かりやすくまとめた指針である。

 

おまけ:おまけ大好きです!!

 

 

 では、なぜマイルド加温療法を併用すると抗がん剤の量を減らしても治療効果が得られるのでしょうか。

 

 

1.    マイルド加温療法は、血流を増加させ、がん細胞への抗がん剤則り込みを増加させます→→低用量抗がん剤でもがん細胞にたくさん取り込まれるので、標準量の治療効果が得られます。

 

2.    細菌などに感染すると免疫系が活性化されますマイルド加温で温めれば免疫系が活性化(細菌に感染してなくとも)されます→→さらに、マイルド加温ではヒートショックプロテイン・HSPを増加させます→→→HSPは特にがん治療に関与する免疫、がん免疫を増強します→→→→がんの治療に効果的なのです。

 

今回は、私の地味な研究課題である、HSPを増加させるマイルド加温療法とHSP入浴法の研究の学会発表となぜマイルド加温併用の低用量抗がん剤治療が普及しないのかの医療界の問題にも迫ってみました。

 

希望としては、“マイルド加温併用の低用量抗癌剤治療”が「ガイドライン」に盛り込まれ、“保険診療”なれば、最高です! 

 

  ***本文中のHSPHSP70のことです。