1.抗癌剤の量が1/3~1/4に減量できる

 

-マイルド加温療法を併用すると、抗癌剤の量は、常容量の1/31/4に減量できる-

(細胞レベルでは1/10まで減量出来る)、(癌細胞への取り込みも数倍増える)

 

多くのがん患者さんは、抗癌剤での治療を薦められていると思います。

その抗癌剤ですが、最近は副作用の少ない薬剤も開発されてきていますが、一般には、患者さんは、吐き気、嘔吐、倦怠感、脱毛、しびれ、便秘、下痢、味覚障害、色素沈着など副作用に悩まされています。しかし、抗癌剤の投与量が、1/31/4で良いとなれば、副作用も軽減され患者さんには優しい治療となります。

 

特に高齢者のがん患者さん、体力のないがん患者さん、--やはり、がん患者さん みなさんにためしてもらいたいですね!

--ためしてガッテンです。

(1)細胞レベルでは抗癌剤は、1/10まで減量出来る

 

その根拠となる私の「膀胱がん細胞とシスプラチンとマイルド加温」実験1を示します。

  1Itoh Y. et al: Experimental Therapeutic Medicine 1:319-323,2010.)

 

  2Itoh Y. et alMolecular Medicine Reports 2:411-415,2009)

 

 

 

がん細胞:ヒトの膀胱癌の細胞(泌尿器科に所属していたので)を使用しましたが、肺癌の細胞、白血病細胞2)等でも実験しましたので、多分、多くのがん細胞に共通して言えると思います。

 

抗癌剤:シスプラチンは比較的多くのがん治療に使用される代表的な抗がん剤で、腎毒性が強く、副作用が大きい抗癌剤です。他に、アドリアマイシン2)でも実験しましたので、多分、多くの抗癌剤で共通して言えると思います。

 

マイルド加温:細胞が死ぬ手前のマイルドな温度40~42℃での加温(全身加温)。

(ハイパーサーミアでは、腫瘍局所を43℃以上にしてがん細胞を死滅させる。)

 

生存率:生きている細胞の割合(細胞が全部生きていれば生存率100%、半分なら50%)

 

結果:

1)細胞は、43℃以上で死にます(数分では死にません、1時間以上)が、40~42℃では何時間加温しても死にません。

よって、この実験の様に膀胱癌細胞を41℃で5時間加温しても生存率100%です。

2)抗癌剤は、ある一定以上の濃度(標準量)でないとがん細胞を殺すことはできません。抗癌剤の量が少ないとがん細胞は死にません。

 よって、標準量(200μg/ml)の1/10量 (20μg/ml) では、がん細胞は死なず全部生きており、生存率100%です。

3)がん細胞が死なない1/10量の抗癌剤とがん細胞が死なない温度の41℃を併用すると、癌細胞は、加温時間を1時間、3時間、5時間と長くするに従い、癌細胞は死滅します。5時間のマイルド加温では標準量の抗癌剤と同じ効果を示しました(両者とも60%生存率)。

4)標準量(200μg/ml)の抗癌剤では、がん細胞の生存率60%です(40%抗癌剤で死んだ)。

 これに41℃加温(マイルド加温)を1時間併用するとがん細胞は、生存率20%(80%死滅)、

 3時間加温すると生存率10%(90%死滅)となります。

 よって、標準量の抗癌剤使用でもマイルド加温を併用すると高い抗腫瘍効果(癌細胞を殺す効果)が得られます。

 

 以上より、膀胱癌細胞において、マイルド加温療法を併用すると抗癌剤1/10量で標準量の抗癌剤の効果が得られる。

(2) がん患者さんに、マイルド加温療法を併用すると、抗癌剤の量は1/3~1/4に減量できる。

 

記載・参考文献

・低用量化学療法併用したハイパーサーミア(マイルド加温でも可)はどうして効くのか?

 赤木純児(玉名地域保健医療センター院長)、他:日本ハイパーサーミア学会 第34回大会抄録p174、2017

・ハイパーサーミアを併用した低用量化学療法の免疫学的効果について. 

 赤木純児(玉名地域保健医療センター院長):統合医療でがんに克つ. Vol.111,No.9,p20-24,2017

 

内容や語句が専門的でわかりにくいと思いますので、皆さんは、赤線の結果を重視して下さい

後日、わかりやすい図にして皆さんにお知らせします。

 

OS(Overall Survival:全生存期間:臨床試験において、治療開始日から患者さんが生存した期間。

 

奏効率:薬物療法の効果を示す割合のこと。CT等の画像診断での評価では、一般的な基準では腫瘍が完全に消失した「完全奏効(CR)」と、30%以上小さくなった「部分奏効(PR)」の合計を指す。

 

臨床的有効性:腫瘍のサイズが変わらない「安定(SD)」状態も治療の効果と見る考え方。

 

HMGB1(High Mobility Group Box 1):がん細胞から分泌される HMGB1と呼ばれる たんぱく質の作用により、正常な細胞内のたんぱく質がアミノ酸に分解され、その一部が血液中に漏れ出ることで血液中のアミノ酸濃度バランスを変動する、これを利用して「アミノインデックス:がんリスクスクリーニングとして利用している。」

 

TLR (Toll-like receptor):細胞表面にある受容体タンパク質で、種々の病原体を感知して免疫を作動させる機能がある。

 

結果:

低用量抗癌剤とハイパーサーミア(マイルド加温でも同様)の併用で、奏効率約30%、臨床的有効率約60%と良好な臨床成績を得ました。

 

・著者らの経験では、抗癌剤の標準量の1/3~1/4量で標準量と変わらない臨床効果が得られています

 

・最近では、腫瘍の縮小は全生存率と必ずしも関係せず、劇的な腫瘍縮小と言うより、効果的な腫瘍破壊(きちんとがん細胞を殺すこと)が長期の生存につながると考えられるようになってきました。

 

・殺された癌細胞から出てくるHMGB1タンパク質が樹状細胞(抗原提示細胞)を刺激して、腫瘍免疫を活性させることが、抗癌剤による生存率延長効果の主体と思われる。

(3)マイルド加温を併用すると、マウスのがんへの抗癌剤の取り込みが4~5倍になる。

 

記載・参考文献

・温熱による薬剤取り込み増強

 長谷川武夫((公財)ルイ・パストゥール医学研究センター):ハイパーサーミア-がん温熱療法ガイドブック、

 毎日健康サロン発行、2008(図を一部改編)

 

がん移植マウス:マウスの足にがん細胞(SCCVII細胞等)を移植し、がんができたマウス。

抗癌剤:シスプラチンをマウスに投与しました。

マイルド加温:41℃で30分加温しました。

抗癌剤の取り込み:抗癌剤を投与12時間後に、マウスに移植したがんをすりつぶし、取りこまれたシスプラチンを定量します(シスプラチンには、白金が含まれているので、白金の量を測定する)

 

結果:

・がん移植マウスに、抗癌剤のシスプラチンを投与するのみより(黒)、マイルド加温を併用した方(赤)が、明らかに、癌細胞への抗癌剤・シスプラチンの取り込みは増加しました。

以上より、マイルド加温を併用すると、がんへの抗癌剤の取り込みが増加する。

(1)細胞レベルでは抗癌剤は、1/10まで減量出来る

(2)がん患者さんに、マイルド加温療法を併用すると、抗癌剤の量は1/3~1/4に減量できる。

(3)マイルド加温を併用するとマウスのがんへの抗癌剤の取り込みが4~5倍になる。

 

(1)のがん細胞実験、(3)のがんを移植した動物実験、の基礎実験そして、(2)のがん患者さんによる臨床実験から、抗癌剤治療では、マイルド加温療法を併用した方が、明らかにがん細胞に抗癌剤が良く取り込まれること、抗癌剤の投与量も1/3~1/4に減少出来ることが明らかとなりました。

是非、がん患者さんも抗癌剤治療の時は、マイルド加温療法を利用してみてください。

 

ちょっと内容が分かりにくい、難しいなと思われた方は、

是非、バンダナ先生の講演会(お知らせで知らせます)に来て直接、お話しを聞いて下さい!

  

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データー等必要の方、転記したい方はお知らせください、同意を得て出典先を明記してご利用していただきます。

 

次回は、実際に、愛知医科大学医学部で実施していた、膀胱がんの患者さんのマイルド加温併用の抗癌剤治療のスケジュール等を紹介します。