No.20200904  泣いてもいいんですよ!

大人になると、なんとなく、「泣くこと」「カッコ悪い」とか、「後ろめたさ」を感じるようになり、涙が出るのをぐっと我慢したことが、みなさんもあるのではないでしょうか。

 

 

前回のブログ “涙は甘いか、塩っぱいか” で少し述べましたが、涙の種類には3種類(基本的な涙、反射的な涙、感情の涙)あり、感情の涙は、ヒトだけが流す涙です。今回は、この感情の涙についてのメカニズムとその効果についてです。

 

 映画、ドラマ、スポーツなど鑑賞していて、ついじわじわと涙腺が押されて、涙が出てくることありますよね。

 

*子供と一緒にテレビの「日本昔ばなし」を見ていて、長男が、泣きながら、「お母さん、死なないでね」と言った時、一緒に泣いてしまった。

 

1.   涙には以外な効果がある。

 

 ヒトだけが流すと言われている感情的な涙には、生理的に流れる涙(基本的な涙や反射的な涙)とは、違いがある。

 

2.   なぜ、感動すると泣くのか

 

 1)東邦大学医学部名誉教授有田秀穂先生の実験

 

   涙を誘う映画を見た被験者の脳の活動状況を調べた結果、涙を流す前には必ず、額のほぼ中央の「正中前頭野」の活性が急激に高まった。「正中前頭野」の特に、前頭前野は「共感」に関係する「共感脳」(第3の目)がある。

 

 

 

 

  2共感脳では、言葉以外の方法(表情、目つき、仕草、声のトーンなど)から、相手の心の意図を汲み取れる

 

→相手の気持ちに共感できる→もらい泣き

 

 3人生経験が豊かな人ほど泣きやすい

 

3. 大人になってから感動して泣くことが増える---年を取ると涙もろくなる

 

 1)涙が出る背景には、左脳がストーリーを解釈し、右脳がそれに共感することで「泣く」。

 

  苦労したこと、それを乗り越えた喜び、そうした経験を多く積んできた人ほど人の状況に共感し、涙を流すことが出来る。

 

 

 

 

4. 泣いたあと、スッキリするのはなぜ。

 

 1)怒りや悲しみだけでなく、嬉しさなどのポジティブな感情であっても過度なものは全てストレスになり得る

 

   →ストレスで自立神経が乱れた時「感情の涙」が自律神経のバランスを回復してくれる。

 

 2「感情の涙」は自律神経の中でも副交感神経の働きによってコントロールされている

 

心が強く動揺したとき気持ちを落ち着かせるため、副交感神経スイッチON→涙が出る/血圧・脈拍・呼吸を穏やかにする

 

   「感情の涙」を流すと脳は、緊張状態癒しの状態に切り替わる泣くと癒される、ストレス発散にもなる

 

 3)ストレスで自律神経の乱れた時、バランスを元に戻す役割を持つのが、「セロトニン(神経伝達物質)」で、涙を流す時に多く分泌される。

 

 4セロトニンはリラックス効果のある副交感神経を活発にすることから、「幸せホルモン」とも呼ばれている。

 

   泣くことでセロトニンが多く分泌され、身体をリラックスさせるので、涙を流した後は、心が落ち着く。

 

 

 5)悲しい時、感動した時に流れる涙には、ストレスホルモンである コルチゾール を涙と一緒に体外に排出する、

 

また、脳内からは脳内麻薬・快感物質である エンドルフィン も放出されるので、泣いた後、スッキリした気分になる。

 

 6)泣くことでストレスが解消されると23日はすっきりした気持値が続く。

 

5. 「嘘泣き」にはストレス解消効果はない

 

   むしろ、疲労やストレスが増強したという実験結果もある→「嘘泣き」は効果なし。

 

6. 全ての涙が良いわけではない

 

 1)泣くことが、どんな時でもストレス解消につながるわけではない。

 

泣いちゃいけない場面だと、ぐっと我慢しながらも、こらえきれずに泣いてしまう時、

 

涙を抑えようとする負荷で逆に、ストレスが増大する

 

7. ストレス解消には、「手放しで泣くこと」

 

 1)気兼ねなく、自分の感情のままに泣ける(手放しで泣ける)状況こそ、一番のストレス解消につながる

 

 21人きりでいる時は、涙を流しやすい状況

 

 3)何かに感動して流す涙

 

 

8. 泣けない人の違い

 

1)泣けない人は、涙をコントロールする機能が非常に強い。

 

  前頭前野には切替脳と言う、怒りや涙を抑える機能があり→感情的に泣くなと働く→泣かない自分

 

2脳が疲れすぎている人は、前頭前野が弱っている傾向にあり→泣きにくい

 

3涙を出しやすくさせるためには、脳内にあるセロトニン神経を活性化させる。

 

そのため、日光を浴び体を動かす→癒しの脳内物質オキシトシンが分泌される→オキシトシンがセロトニン神経に働きかける

 

4)泣けない人は、泣く以外のストレス解消法を知っているから、泣く必要がない。

 

 

9. 泣き虫な人

 

1)基本的には、我慢せず泣く。

 

2)涙もろい人は、自分の「涙のツボ」(こんな状況に陥ると泣くことが多い)を知っておく。

 

 過去に泣いてしまった状況を振り返り、同じ状況に陥りそうな時に落ち着いて対処する。

 

3)泣きそうになったときは腹式呼吸をする。

 

 泣く寸前は、身体が興奮状態にあり、浅い呼吸をしがち→深い呼吸(深呼吸など)に変えるだけで気持ちが落ち着く。

 

 

 

10. 心のしこりを吐き出すこと

 

1泣くこと以外にも心を軽くする方法がある。

 

2)気持ちを言葉にする、ノートに書く、自分にとって心地よい形を選ぶ。

 

 

 

11. 涙は自分と向き合うヒント

 

1)流れた涙の理由→自分の気持ちを知るヒント

 

*参考図書:竹内好美  著書「号泣セラピー」(青春出版)及び対談

 

 

がん患者さんのマイルド加温療法を開始した当初は、研究室の片隅で加温装置を1台おいて始めました。

 

その当時は、優れた抗がん剤も画期的な手術技法もなく、がんはほぼ死を意味する病気であり、特にマイルド加温療法を希望される患者さんは、末期の方がほとんどでした。

 

 ある患者さんは、子供の成長を喜んで話し、小学校の入学式までは生きたいと涙し、ある患者さんは親との亀裂を涙し、ある患者さんは故郷へ帰りたいと涙し、ある患者さんは家族に心配・迷惑をかけていると涙し、ある患者さんは近づく死に恐怖して涙し----多くの患者さんが涙した。

 ただ、そばで話を聞きながら、涙と汗を拭くだけで、結局何も気の効いた言葉も言えなかった。

 でも、帰るときには、加温でほんのり顔も赤らんで、元気に、にっこり「ありがとうございました」と帰っていった。

 きっと、涙することで、少しはがんというストレスと恐怖から解消され、少なくとも帰り道は、HSPセロトニンエンドルフィンで幸せな気持ちになってくれたことと思います。

 

 

 

バンダナ先生が、初めて号泣したのは、初めて患者さんの看取りに立ち会った時です。患者さん及びご家族の要望で、ご臨終後も清拭、メイク、お見送りと、最後までご一緒させていただきました。

車が見えなくなるまで見送ったあと、我慢していた涙が出始め、一生懸命我慢していた時、そばにいた看護師さんが、「先生、泣いてもいいんですよ」 と言ってくれました。看護師さんの肩を借りて、大声を出して思いっきり泣きました。

 

 

 私の研究者としての人生が大きく臨床に(患者さん側)に傾いた人生の岐路となったこの患者さんからは、とても多くの患者さん目線の病気の見方を教えてもらいました。忘れることのできない大切な患者さんです。

 

 あの時の看護師さんのように、バンダナ先生も、泣きたい患者さんに 「泣いてもいいんですよ」 といつでも、肩をかしてあげたいと思っている。