冬になると、衣服の脱着、車のドアやドアノブに触れた時など「静電気のパチッ」はとても不快ですよね、結構、痛みを感じるくらい(約3KV)の電撃を受けることもあります。私達の身のまわりのものは+や-の電気を持っています。もちろん私達の人体も。そこで今回は、静電気と私たち体のかかわりについて解説したいと思います。
1.普通の電気と静電気の違い
そもそも家庭で使っている電気と静電気はどう違うのか。
電灯をつけたり、機械を動かしたりする電気はエネルギー、
すなわち力で電力と言われるもので、中学で習った電流(A)アンペアx電圧(V)ボルト=電力(W)ワット。そして、家庭で使っている電気は、動電気と言って、常に流れていて溜まることはありません(常に流れているのでコンセントからいつでも取れる)。
静電気は、物と物の摩擦・接触によって発生する電気のことで、帯電(溜まっている状態)したまま動かないので静電気です。静電気は普通の電気の1/1000~1/10000程度しかありません(一瞬しか持たない)。また、静電気は絶縁体の中で次第に電気が溜まる性質があります。静電気はどんなに蓄えておいても、使うときには一瞬でなくなってしまいます。
*絶縁体:プラスチック、ゴムなどの電気を通しにくい物
*導電体:鉄や同など電気を通しやすい物
*静電気では、電気量が非常に少ないので、一瞬、電流が流れるだけで電化製品には利用できません。
よって、持続的に電気が流れ続けるようにと電池が開発されました(最初に作られたのが、ボルタ電池)。
*ちなみに雷は、雲に溜まった静電気が、空気中を一気に流れる自然現象です。
2. 静電気の基礎知識
2-1.静電気はマイナスの電気の移動で生じる
私達の周りにある色々な物、プラスチック、繊維、金属などその素材は様々ですが、全て電気を持っています。人も同じです。
図1-1 どんなものでも+と-の電気を持っており、普通は+と-の電気を同じ数だけ持っており、バランスが取れている。
電気的に中性な状態である。
図1-2 異なる2つの物が衝突(摩擦・接触・剥離)すると。
図1-3 -を引っ張る力が強い方に-の電気が引っ張られ移動する。衝突してバランスが崩れ、どちらかが+に帯電し、もう一方が-に帯電し、静電気を帯びている状態です。
このように、静電気は-の電気の移動で生じ、静電気には+の静電気(A)とーの静電気(B)が存在します。
静電気が+に帯電するか、-に帯電するかは、すり合わせる物の組み合わせに左右されます。
静電気を帯びると、電気的にバランスが悪くなり良い状態に戻ろうとして、-を引っ張る力が強い方に、-の電気が移動します。
図2には、どのような物が、どの程度+または、-に帯電しやすいかをを示した帯電列です。
2-2.静電気の「バチッ」の正体
+に帯電したものとーに帯電したものが近づくと、-に帯電したもののーの電気は、バランスを取り戻そうと、+に帯電した側に戻ります。すなわち、-に帯電した物のマイナスの電気が+に帯電した物に戻る動きを放電(ーの電気の放出)といい、物と物の間に電流が流れ、「パチッ」と電撃をうけます。
表1.に人体への電撃電位と電撃の強さを示します。
静電気の電圧が大きいほど、移動する静電気量が大きくなり電撃の痛み「パチッ」が強くなります。
図3. ドアノブ(導電体)が-に帯電していて、自分が+に帯電している場合
ドアノブのーの電気が自分の手(人間は+に帯電しやすい)に流れ込んで放電がおこり、感電(身体に電気が触れる)し、「パチッ」と痛みを感じます。
ドアノブは電気を通す物質(導電体)なので、人体に溜まっていた静電気はドアノブに流れます。
静電気をゆっくり逃がす木やコンクリート、壁、ドアノブカバーに触れて放電してからドアノブに触る(2-5参照)と、パチッを避けれます。
図4. 髪の毛と下敷き(絶縁体)の静電気
髪の毛と下敷きはそのままでは静電気は発生しません。
しかし、髪の毛と下敷きをこすり合わせると、髪の毛(+に帯電)が下敷き(ーに帯電)にくっついて立ち上がり、静電気が発生します。
しかし、下敷きを手に持っても「パチッ」と放電しません。
下敷きは電気を通さない物質(絶縁体)なので、下敷きに溜まった静電気が人に移動することができないからです。
髪の静電気予防にはトリートメントの使用が効果的(バンダナ先生みたいにアクロヘアーも)
2-5 ガソリンスタンドに設置してある静電気除去シート
図5.静電気除去シート
ガソリンを給油する前に触れる、黒くて丸い静電気除去シートは、人体に溜まった静電気を、ゆっくり逃がすことで「パチッ」の痛みなく静電気を放電します。
おまけ. 電流の流れと電子(-の電気)の流れは逆、おかしいじゃないか!
図3.の-のドアノブの電気は+に帯電してるヒトの手に流れるのに、電流は+のヒトの手から-のドアノブに流れるなんて。
中学生の時、誰でも抱く疑問です(図6)
・電流:電気の+側から-側に向かって流れる
・電子:電気の-側から+側に向かって流れる
逆方向になった理由
・電流が発見された当時(電子の発見の約150年前、何が流れているかまでわかっていなかったので、電流は、+から-に流れると決めた。
・1900年代に入り、電流の正体が電子(-に帯電した電気)であり、定義した電流の向きと逆だった。
・しかし、定義を変えることは混乱を招くので、そのままにされたため混乱しますが、中学生諸君!決め事だと覚えちゃいましょう。
3. 静電気が発生する原因
静電気は、「接触」、「摩擦」、「剥離」の3つが元になって、身の回りの生活の中で色々なところで発生しています。
3-1. 接触帯電
異なる2つの物が接触、ぶつかるとき、片方の-の電気がもう片方へ移動します、これを接触帯電といいます。ただ、接触するだけでも発生します。
3-2. 摩擦帯電
2つの物がこすれ合って静電気が起こる場合を摩擦帯電といいます。
衣服の脱着では、衣類と人体、衣類と衣類が摩擦して-の電気が移動することで発生します。
3-3. 剥離帯電
接触している物が離れる(剥離する)とき、静電気が発生することを剥離帯電といいます。
食品用ラップフィルムの芯に巻きついているフィルムが剥がれるときに静電気が発生します。
シールを台紙からはがす時、シールと台紙の間で、-の電気の移動が起こり、静電気が発生します。
4. なぜ、冬に静電気が発生しやすいのか
4-1. 日常の静電気の放電
一般に体に溜まった静電気は、日常生活で知らないうちに少しずつ放電されていきます。一般に、湿度が65%を超えるとせい電気は発生しにくくなり、発生しても自然に逃げていくと言われています。
空気中の水分が多いところに物体を置くと、物体に溜まった静電気は、物体の表面に付いた水滴や、空気中の水分を伝って自然に静電気が逃げて行きます。最終的には、アースから地面に逃れます。湿度を保つことは、静電気が起こりにくくするのに有効です。
夏は特に湿度が高いので、空気中の水分を通して静電気は自然に放電されます。水は電気を通しやすいため、空気中の水分が多いほど放電されやすいからです。
冬は、乾燥していて空気中の水分が少ないため、静電気が放電されにくくなり、次第に物体に静電気が溜まってしまいます。体に静電気が溜まった状態で、金属製のドアノブなど電気が流れやすい物に触ると、溜まっていた静電気がドアノブに向かって一気に流れ、「パチッ」と痛みを感じます。
部屋が乾燥してると、静電気が空気中の水分に逃げれないので、加湿器などを使用し、湿度50~60%に保ちましょう。静電気は、湿度20%以下、気温20℃以下になると発生しやすくなります。
もう1つの原因は、冬になると様々な素材の衣服を重ね着ることが多くなります。夏であれば綿や麻素材のTシャツなど素材も1~2種類ですが、冬になると合成繊維も加わり、数種類の素材を重ね着して、摩擦が置きやすく静電気が発生しやすいからです。
*夏でも静電気は発生します。エアコンで空調が効いてる場所は、空気が乾燥しています。また、涼しいと湿度の高・低がわからなくなるので、湿度計で湿度をチェックしましょう。
おまけ. 皮膚の乾燥(乾燥肌)
冬は乾燥しており、皮膚からも水分が失われていきます。
図7. 皮膚の乾燥
通常はセラミドと皮脂膜によって、肌の水分量は保持されています。しかし特に加齢、衣服のこすれなどによって、肌の水分が蒸発しやすくなり、セラミドに蓄えられていた水分も失われてしまう状態が乾燥肌です。
健康肌の場合は、静電気は肌の水分を通して日頃から少しずつ放電されますが、乾燥肌の人は静電気が体に溜まりやすくなっており、金属などに触れると「パチッ」と痛みを感じます。
乾燥肌に静電気が起きるとかゆみを増す原因になります。c繊維がより皮膚表面に近いところまで伸びて、わずかな刺激でもかゆみを感じます。水分の補給や肌の保湿にも気をつけましょう!
すりわせる繊維の帯電列で位置が離れているほど強い静電気が発生します。
例えば、アクリルのセーターとナイロンのコートでは静電気は起こりやすく、ナイロンのコートと毛(ウール)のマフラーでは静電気は起こりにくい。
図8. 繊維の帯電列
繊維もその種類によって、+に帯電するか、-に帯電するのかが図8のようにわかっています。
綿や麻などの天然繊維は比較的帯電が少なく、静電気が起こりにくいです。木綿が帯電しにくいのは、発生する静電気が少ないのではなく、木綿の親水性で吸湿量が大きいため電気が比較的流れやすく、発生した静電気が短時間で全体に拡散、またはアースへ流れさってしまうと考えられています。
衣類の静電気予防には1)静電気が起こりにくい素材を選ぶ、2)室内の湿度を約60%にキープ、3)柔軟仕上げ剤(空気中の水分子と結合しやすい)を使用するなどで予防しよう!
6. アース :導電体と絶縁体
金属のように電気を通しやすい物が導電体、プラスチックのように電気を通しにくい物が絶縁体。
2つの接触するものが導電体でも絶縁体でも静電気は発生します。しかし、発生した電気の性質は違います。
3-1. 導電体に発生した静電気
導電体が+か-に帯電していてそのままにしておくと、帯電したままです。しかし、アース(導電体を大地・地球につなぐこと)すると、一瞬で、帯電したていた+または-の電気が地球に逃げていき、静電気がない電気的に安定した状態になります。冷蔵庫などの家電製品にはアース線が配線されていて、アースにつなぐことで、溜まった電気を地球に逃がし、家電製品を電気的に安定した状態にしています。
3-2. 絶縁体に発生した静電気
絶縁体に静電気が発生した場合、導電体とは異なり、アースに接続しても電気は地球に流れません。
絶縁体に発生した静電気をなくすには、静電気除去対策が必要です。
3-3. 静電気除去対策
1)除電器(イオナイザ)
静電気を帯びた物はプラスの電気とマイナスの電気のバランスが崩れた状態なので、バランスが良い状態(電気的に中性な状態)にするのが除電器(イオナイザ)です。
除電器(イオナイザ)は、+イオン、-イオンの両方を発生させ、対象物にぶつけることで静電気を除去します。
2)日常生活での静電気除去対策
・湿度を高くして静電気を溜め込みにくくする。
・保湿材、ハンドクリームなどで手や肌を保湿する。髪にはトリートメント。
・衣類には柔軟剤を使用する。
・衣類の重ね着には、静電気防止スプレーを使用し、衣類の摩擦を防ぐ。
・静電気除去シートを貼る(エレベーターやガソリンスタンドでも利用)。
・静電気除去ブレスレットの使用
冬の静電気「パチッ」の予防には、
適度な湿度を保つ、摩擦を防ぐ、ゆっくり静電気を逃がす物にさわってからドアノブに触れる!