氷が食べたい程暑くもないのに、無性に氷が食べたくなり、毎日たくさん氷を食べる人。
これは、単なる、氷好き、氷を食べる癖、ではなくて「氷食症」という病気かもしれません。
先日、アイスコーヒーの氷をカリコリ食べている人を見かけました。実は、バンダナ先生も若い頃、同じように、コーヒーやジュースに入っている氷を(みんなは残すのに)、カリコリ音を立てて食べていました。氷を見ると、口の中で氷を溶かすのではなく、なんともカリコリと噛んで食べたくなるんです。ちょっと、行儀悪いかなと思う間もなく、食べたくなるんです。コップのガラスを食べるわけではなく、氷もコーヒー代金に入っているのだから違法行為ではありません。ただ、人前で、氷をカリコリすると一気に注目を集めます。同僚から、「先生、貧血じゃないですか?」と聞かれ、「そうかもね」といい加減に答えていました。なんといってもその頃は、貧血よりも金欠の方が心配でしたから。後から、鉄欠乏性貧血(女性の場合、生理で鉄が不足しやすいく貧血になりやすい)になると氷を食べたくなるのだとわかりました。
貧血と金欠はよく似ている、両方重なると結構、やばい!(ダジャレも入ってる)
貧血は体内の酸素不足(酸欠)で体の全細胞の呼吸ができない(個人的影響)。
金欠は日常生活のお金不足で生活ができない(社会的影響)。
生き物のエネルギー(通貨)と言われるATPは酸素がないと作れず生きていけない、お金(通貨)がないと生活できず生きていけない→どちらも生きていく上で必須。「金欠」は病気ではありません。
「無性に氷を食べたくなって密かに悩んでいる人」、「ちょっと氷食べ過ぎかもという人」へ(女性が多い)、その原因と治療法を知って安心してください。
「氷食症」とは、
氷食症は名前のとおり、季節を問わず氷を食べたくなる病気です。通常食べることない栄養のないもの(土、泥、髪の毛、チョークなど)を無性に食べたくなる「異食症」の1つです。
氷食症の定義:
あいまいですが、1日に製氷機一皿以上の氷をカリカリ噛み砕いて、毎日食べる状態が2ヶ月以上続きます。
氷食症の症状:
・氷を多く食べるので、体を冷やし、胃腸を悪くしたり、お腹を下したりします。
・氷食症は高い確率で鉄欠乏を伴うので、鉄欠乏症状(持久力の低下、記憶力の低下、寝起き寝つきの悪さ、食欲低下など)や、貧血症状(顔色不良、動悸、息切れなど)を伴うことが多いです。
・女性に多く、特に思春期や妊婦、授乳婦に見られやすく、近年では、約2割の女性が氷食症を発症していると言われています。特に、月経過多や妊娠、吸収不良、偏食・ダイエットなどによって鉄分が不足しがちなので、氷食症になりやすい。
・男性の氷食症は注意! 女性は生理が原因で鉄不足になることがほとんどですが、男性で氷食症になる人は、胃腸から出血して鉄欠乏を起こすケースもあるので注意。
・日本おいては、鉄欠乏性貧血では、氷食症以外の異食症の症状が現れることは極めて稀と言われています。
・氷食症は、同じ貧血でも鉄欠乏性貧血にのみ見られます。
しかし、氷食症において、貧血は必須条件ではなく、強いストレスによることもある。
また、貧血だからといって、必ず氷食症になるわけではない。
鉄欠乏性貧血になるとなぜ氷を食べたくなるのか!
原因はよくわかっていません。仮説としては、
1.貧血に伴う口腔内の炎症を抑えようとするため
2.貧血で自律神経がうまく働かないことで体温調節が出来ず、口の中の温度が上がったのを冷まそうとしている
3.口腔粘膜や味蕾の変化によるもの
4.氷を噛むことで反射的に脳の血流を増加させようとしている
5.強い精神的ストレスや脅迫観念による
治療法:鉄の補給を適切に行う。
1.鉄剤の注射治療:2~4回の注射で症状が消える人が大半。貧血が改善するより早いタイミングで消失するようです(あびこ内科外科大橋クリニックより)。
2.鉄剤の服用:鉄分の錠剤を1ヶ月程度服用すれば、体内の鉄分が増え、氷食症も改善する。
3.食生活の改善:鉄分が多い食材(ほうれん草、ひじき、レバー、卵黄など)を摂ると、早ければ1ヶ月程度で改善する。
4.鉄分は吸収率の低い栄養素なので、身体への吸収率の良い「ヘム鉄」で摂るとよい。
ヘム鉄は、豚レバー、鶏レバー、あさり、かつおなどの動物性食品(赤身の肉・魚)に多く含まれる
5.対症療法として:氷の多食による体温低下、冷えおよび氷食症の原因の1つである
ストレス予防のためにもHSP入浴法(HP参照)を実施する
付録
貧血のいろいろ:日本人に最も多いタイプは、鉄不足で起こる「鉄欠乏性貧血」(約90%)
貧血とは:赤血球に結合する酸素の量が、体が必要とする酸素の必要量に対して不十分な病態です
貧血の症状:疲れやすい、手足が冷える、頭痛、注意力散漫、耳鳴り、めまい、動悸、息切れ等。
1. 鉄欠乏性貧血:
鉄摂取量の不足、過剰な鉄損失、鉄の吸収阻害などが原因でヘモグロビン(Hb)の主な材料である鉄が不足し、Hbが作られなくなるために起こる貧血。Hbは赤血球の中にあり、全身に酸素を運搬する役割を果たしているので、Hbが不足することで十分な酸素が行き渡らず貧血症状が現れる。
貧血症状以外に鉄欠乏性貧血特有の症状としてスプーン状爪、舌炎、口角炎、そして異食症などが知られている。
2.再生不良性貧血:骨髄で造られる赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気。
3.悪性貧血(巨赤芽球性貧血):ビタミンB12や葉酸の欠乏で起こる。
4.溶血性貧血:赤血球の寿命よりも赤血球膜が早く壊れて起こる。
5. 腎性貧血:腎障害で赤血球を作る時の因子(エリスロポエチン)が腎臓で作れない。
6.慢性疾患に伴う二次性貧血:慢性感染症、慢性炎症、悪性腫瘍などによる炎症性の貧血。
7.その他:加齢による生体機能低下で起きる老人性貧血、亜鉛や銅などの微量栄養素不足による貧血等。
バンダナ先生からコメント
一般に貧血は死ぬほどの病気ではありませんが、ヘモグロビンHb(正常値:男14、女12g/dl)が10以下になると、体がえらい、だるい、しんどい、ふらつき、めまい(いわゆる倦怠感)が起こるので自分は重病人だと思ってしまいます。バンダナ先生もHb8の時は階段を登るのもえらく、すぐ疲れて息切れし、もう死んじゃうのではと内心思いました(バンダナ先生は人前では大きなこと言うのですが、結構気が小さい)。鉄剤の服用で改善しました。
特にがん患者さんは、抗がん剤・放射線・手術等のがん治療で赤血球が減少し貧血になることが多いので、検査値の赤血球(WBC)、ヘモグロビン(Hb)が低い場合(Lや↓の印)を確認してください。つい、疲労感、倦怠感が増すとがんが進行したのではと思いがちですが、貧血による酸素不足が原因のこともあります。
「異食症」
食べものではないものの摂食を1カ月以上にわたり続けている場合に、異食症と診断される。
例としては、氷、土、毛髪、チョークなどで、氷食症、土食症、食毛症という個別の症状名がつけられている。
異食症の原因:脳への酸素不足により、満腹中枢障害や体温調節障害が起こるためと考えられている。 極度の精神的ストレスが原因のことがある。
ストレスによりセロトニン不足となり、感情や欲求が抑制できなくなるのが一因と言われている。
貧血ねずみも氷をかじる(実験) (Science,Vol169:p1334-1336,1970年)
方法1.ねずみから脱血して貧血ねずみにする。
方法2.氷でも水でも好きな方から水分を取れるようにする。
結果1正常ねずみは、45%の水分を氷から摂る。
結果2.貧血ねずみは、96%の水分を氷から摂る。
結果3.貧血ねずみは、氷を舐めるより、かじることが多かった。
結果4.貧血が改善したねずみは、氷には見向きもしなかった。
結論. ねずみも貧血で氷食症になる
貧血の人、足がむずむずしませんか→最近の報告では、鉄欠乏貧血の患者さんはむずむず脚症候群を合併するようです。
氷食症では、身体が冷えるとともに、その原因は貧血とストレスです。
よって、氷食症の人には冷え対策とストレス予防に、ぜひ、HSP入浴法(HP参照)をおすすめします。
寒くなってきました。体の芯まで温まり、免疫を高め、ストレスから私たちを守るHSP入浴法でこの冬を乗り切ろう!!
(結構、良いオチだ!)