赤ちゃんの顔はいつまで見ててもあきません。
そのかわいさには、大人の顔の魅力とは異なり、パーツの位置関係というより丸みを帯びた輪郭や広い額、大きな目といった赤ちゃんの顔に認められる個々のパーツの特徴に基づいて感じられるそうです。
今回は、大阪大学人間科学研究科教授入戸野 宏先生の研究「かわいいロボット魅力心理学」、「かわいい赤ちゃんの顔魅力心理学」、「カワイイ心理学」を紹介します。年末に向け忙しい皆さんも、しばし、かわいい!とほっこりしてください。
(どんなに高価なベビー服着ても、裸でも、やっぱり、かわいさは、赤ちゃん特有の顔ですよね、昔のキューピーを思い出します)
I.子供は何故かわいいのか。子供のかわいさは見ただけではない。
1.かわいいと感じる本能か:動物行動学者コンラット・ローレンツによるベビースキーマ説
・人間や動物の赤ちゃんに見られる身体的特徴を「ベビースキーマ」と呼び、人がそのような刺激を受け取ると
かわいいと感じたり、相手を守ろうとする行動が自然に生じる。
*ベビースキーマ:人間や動物の赤ちゃんに見られる体の特徴を示す:体にくらべて大きな頭、少し突き出たおでこ、顔の真ん中よりやや下にある目
2.子供が一番かわいい時期:かわいらしさのピークは、1歳前の子ども
・生後0歳~3歳までの写真での調査。生まれたばかりの赤ちゃんは逆に最もかわいくないと感じられた。
・幼くて弱いものを守る本能と「かわいい」は関係してない.
(確かに、生まれたばかりの赤ちゃんより、1歳くらいの子供の方がかわいいと感じるよね。)
3.なぜ、1歳前の子どもを最もかわいいと思うのか:かわいいと思うのは、相手と仲良くしたいから
・1歳前の子どもは(母親から離れて自分で動き出せる時期)、生後間もない赤ちゃんほどの保護は必要ない
→大人と一緒に遊べるようになる
・かわいいと思うのは、相手を保護したい・守りたいという気持ちではなく
→相手と仲良くしたい、一緒にいたいという気持ちと関連している→仲間であることの証
・女性の方がかわいいものに関心が高いのは、女性の方が人間関係を重視するから。
II.見た目以外で「かわいい」と感じる重要な要素
・「かわいい」という感情は、人と人、人と物の交流を促す。
・「ベビースキーマ」の特徴のような、見た目の要素だけでかわいいと感じられる程度が決まってしまうのか。
1. 数と関係性の効果
実験1:さくらんぼ、ロボットの数がA)1つの場合、B)2つがただ並んでる場合、C)2つがつながりを感じさせるように並んだ場合→どちらがかわいいと感じるかをアンケート
結果:C)2つがつながりを感じさせるように並んでいる場合がもっともかわいいと感じる
実験2:つながりを感じさせるロボット動画を1~10台で検証
結果:2台のときが最もかわいいと感じられる
図1. 見た目が似ている複数の対象がただ並んでいる(A)よりも、 つながりが見える(B)ほうが、より「かわいい」と感じる。
結論:1人より2人がかわいい、2人の間のつながりが見えるとよりかわいく親しみやすく感じられる。
まとめ:今回の研究から、個体がもつ特徴を超えて、社会的な関係性がかわいいと感じられる程度に影響することが分かった
III.赤ちゃんの「かわいさ」は逆さになっても分かる→顔の形状や個々のパーツが重要
1.おとなの顔の印象は上下逆にすると判断しにくくなると言われてきた、「ベビースキーマ説」は正しいのか?
実験1:コンピューターで合成した6ヶ月児の赤ちゃんの顔画像の正立像と倒立像での「かわいさ」を比較
結果1:赤ちゃんの顔の「かわいさ」は、逆さにしても同じように評価できた。
実験2:かわいさの評定値が高かった顔と低かった顔の正立像と倒立像での「かわいさ」を比較
結果2:かわいさの評定値に差があっても、顔画像の向き(逆)にかかわらず評価できた。
図2. A. 赤ちゃん顔に対する「かわいさ」の評定値は、正立顔でも倒立顔でも差がなかった。
B. 2つの顔からよりかわいい高い顔を選択する割合は、顔の向きによらなかった。しかし、倒立顔ではやや成績が下がった。
結論:赤ちゃんの顔の「かわいさ」は、パーツの間の位置関係というよりも、輪郭の丸みや目の大きさといった赤ちゃん顔によく認められる個々のパーツの特徴に基づいて知覚される→ベビースキーマ説が正しい
IV.日本人赤ちゃんのかわいさが高いと評価される顔の客観的特徴:日本人赤ちゃんのかわいい顔を作成
実験1:保護者から提供された生後6ヶ月の赤ちゃんの画像を材料として、200名の日本人のかわいさの評定から、顔のかわいさに関連するのは、顔の下半分にぱっちりとした目がある、顔が丸みを帯びている特徴であることが確認された
→得られたパターンはベビースキーマと一致した。
これらのパターンからかわいさを増した顔と減らした顔を作成し、インターネット調査で、より可愛いと感じる顔を選択し評定した。
図3. 90%の人が赤ちゃん顔のかわいさの違いを識別し、よりかわいい方を選んだ。若い男性は正答率が低かった。
結論:日本人の赤ちゃん顔のかわいさも、ベビースキーマ特徴に基づいて評価されていることが確認された。
また、赤ちゃん顔の「かわいさ」は、個人の好みとは別に、客観的な特徴として存在することを示した。
よって、かわいいロボットやイラスト作成には、パーツの配置を工夫するより、かわいいと感じられる個々の要素を組み合わせる方が良いとのことでした。
この結果は「日本版かわいい乳児顔データセット (Japanese Cute Infant Face [JCIF] dataset)」、インターネット上で公開されたとのことで、国内外で利用され、かわいいに関する研究の発展に期待するとのことでした。
*赤ちゃんの顔の「かわいい」は世界共通のようですね。逆さにしてもまた、誰が見ても赤ちゃんはかわいいわけです。
詳しくは、下記を参照してください。
関連リンク:大阪大学 ResOU ・大阪大学 ResOU
DOI:https://doi.org/10.1371/journal.pone.0290433
参考URL
人間科学研究科教授入戸野 宏