HSP入浴法



HSPを入浴で増やす

HSPの研究は諸外国の方が進んでいるかもしれないが、HSPを増加させる活用法は日本人にとても適している。その理由は、日本のお風呂文化。家庭のお風呂、温泉、銭湯。多くの日本人は利用している。

 

HSPは熱ストレス(40℃~42℃)で最も効果的に増加するので、まさにお風呂は絶好の場になる。なお、シャワーでは体温を上げるのは難しくHSPは増加しない。

 

HSP入浴法

1.バスタオルと着替えは、すぐ手の届くところに置く

 

2.浴槽のふたを開けたり、床や壁にシャワーをかけ浴室内を温める

 

3.手、足、体(心臓に遠いところから)に、かけ湯をする

 

4.浴槽には、足から手、体の順にゆっくりと浸かる

 

5.湯に浸かりながら舌下で体温を計る。38℃まで上がるのが理想。

  ※お湯の温度目安/42℃→入浴10分、41℃→15分、40℃→20分

  ※血行促進作用のある入浴剤を使用の場合は、40℃→15分

 

6.入浴後は「10分~15分」保温する

 

 

※HSP入浴法で一番大切なところが、最後の保温時間です。

 

体温を37℃以上に保つことで、体内のHSPが増えるので、体の水分はしっかりふき取り、体が冷えないよう衣類を身に着け、

冬は暖かい部屋で、夏は冷房をかけずに最低10分間、体を保温します。

 

水分補給には、冷たいドリンクを避け、常温、もしくは温かい飲み物で補います。冷たいドリンクは保温後に飲みましょう。

HSP入浴法の注意事項


 

・心臓疾患など疾患のある方は、医師に相談してください。

 

・高齢者、体力の無い方は、半身浴でもかまいません。

 

・半身浴では、肩を冷やさないように、お風呂の蓋を首まで付けたり、

 肩カバーをしたり、時々首までお湯に浸かって肩を冷やさないようにする。

 

・冬は、高齢者に多い入浴事故に注意する。

 

 

1) 温度差対策

 

・浴室内を温めておく → 入浴前にお風呂の蓋をとり、浴室を温める

 

・浴室の床に湯をかけて温める。

 

・すぐに湯船に入らず、手、足、体(心臓に遠いところから)に、かけ湯をする

 

・湯船から出る時は、体についた水分をしっかり拭き取る。

 (下着まで着て浴室から出ても良い)

  体についた水分が蒸発するのに必要な気化熱が体から奪われるので、

  ぞくっと感じたり、冷えを感じたりする。

 

・着替えの部屋を暖めておく。

 

 

2) 家族に「お風呂に入る」と声かけをしてから入浴する。

 

・一人の場合は、タイマーをセットし、時間が分かるようにする。

 

 

3) 水分補給

 

・高齢者の場合、体の水分量(赤ちゃん80%、成人60%、老人50%)が少ない。

   よって、大量の汗をかくと、脱水になる恐れがあるので、必ず水分補給をすること。

 

・高齢者の場合、1回に飲む水分量が少ないので、こまめに水分を補給する。

 

・入浴後の汗は、体温調節のため水分が多いが、大量の汗では塩分も失うので、

 スポーツ飲料などでも良い


HSP入浴法に関してQ&A

Q-1. HSP入浴法の42℃での入浴は、ちょっと熱いのですが。

 

A-1. 40℃でもかまいません。

     HSP入浴法では、42℃で10分、41℃で15分、40℃で20分と42℃より低い温度での方法もあります。湯温を下げると入浴時間が延びます。自分に合った湯温を選びましょう。特に、夏は外気温が高いため42℃では熱く感じます。一方、冬では逆に40℃の湯温ではぬるく感じ、42℃でもそれほど熱く感じません。日本には四季があり、外気温が大きく異なるので季節に合わせて湯温も変えて良いですよ。

 

 Q-2. HSP入浴法の入浴時間が長くて、我慢できません。

 

 A-2. 我慢できなくなったら、立ったり、湯船から出て休息してもかまいません。

   合計で、それぞれの時間湯船に浸かってください。

41℃で15分:例5分入浴、休んで5分入浴、休んで5分入浴など。好きな音楽を聞いたり、歯を磨いたり、A-3の軽い運動をしたりしていると、結構時間がたってしまいますよ。いずれにしても、ちょっと熱いかな、ちょっと長いなと少し負荷を感じるくらいでHSPが増加します(HSPはストレスで増加します)。ちょっと我慢の分だけHSPが増えますよ。

 

 Q-3. HSP入浴時間中は動かないで、じっとしていたほうが良いのですか。

 

A-3. 動いてもかまいません。

  音楽を聞きながら、歯磨きしながら、手・足のマッサージをしながら、ちょっとした手・足の運動(下段に記載)をしながら、、、と入浴時間を楽しく有効に使いましょう。

 

<湯船に浸かってるときや保温中にできる簡単な手・足の運動>

ゆっくり、ゆっくり、1、2、3、4、1,2,3,4と繰り返します。

1.肩の上げ下げ運動

・左肩を上げ、おろして、右肩を上げて、おろして。

・両肩を上げて、おろして。

 

2.肩もみ運動

・右手で左肩を首元から肩にかけてゆっくりもみ、左手で右肩を首元から肩にかけてもむ。

 

2.首の前・後、左・右、回転運動

・首を前に倒して、後ろに倒して

・首を左に曲げて、右に曲げて

・首をゆっくり回転して

 

3.眼球の上下、左右、回転運動

・眼球だけ上に、下に、

・眼球だけ右に、左に

・眼球を左上から右下に

・眼球を右上から左下に、

・眼球だけぐるっと回転させて

 

4.手のグー・チョキ・パー運動

・左手をグー・チョキ・パー

・右手をグー・チョキ・パー

・両手をグー・チョキ・パー

 

5.足指の前後運動

・両足の指を前に、後ろに

 

6.腕、足リンパマッサージ

・左手首(下)から肩(上)に

・右手首(下)から肩(上)にマッサージ

・左足首(下)から太股(上)に

・右足首(下)から太股(上)にマッサージ

 

7.ふくらはぎのマッサージ

・左足ふくらはぎをマッサージ

・右足ふくらはぎをマッサージ

 

8.その他、気になっている個所、仕事でよく使う部位をマッサージする。

 

 Q-4.  汗があまりでず、のぼせそうになるのですが。

 

 A-4. 入浴前に水分を取ってから入浴しましょう。

     入浴前に水分補給すると、汗が出やすいですよ。入浴中にも水分補給しても良いです。

       あまり入浴しない人、入浴しても短時間の人、日常あまり汗をかかない環境にいる人は、

汗をかくことが下手で、汗が出にくいのです。汗が出ないと熱が体にこもり、のぼせ易くなります。

数回HSP入浴法を経験すると自然に汗が出るようになります。

 

<汗と熱の放散(気化熱として)>

    汗1mlで0.6Kcalの熱が気化熱として奪われます。汗100mlでは60Kcal の熱が放散されるので、体重約60Kgの人の体温を1℃下げることができます。

 

 Q-5. HSP入浴法は、やはり夜が一番効果的ですか。いつ行うのが良いですか。

 

 A-5.  今までの実験では、日中での時間帯によるHSPの増加に大きな差はありません。

       どの時間帯がHSP入浴法で一番HSPが増加するかの実験はしていませんが、今までの実験からは、HSPの増加に関しての大きな日内変動はないと思われます。よって、都合の良い時間(昼間でも)でかまいません。

       一般には、寝る1~2時間前にHSP入浴するのが良いと思います。入浴で上がった体温が下がっていく、この体温の低下が眠気を誘います。また、マイルド加温療法やHSP入浴法を行った後は、ちょっとした疲労感があり、ねつきの悪い人もはやく寝れます。また、夜中に何回もトイレで起きる人も、トイレ回数も少なくなりぐっすり眠れます。

 

 Q-6. 足湯みたいに部分だけ温めるだけでも良いですか。

 

 A-6. 部分加温では全身浴での効果は得られません。

  加温する部分の大きさにもよりますが、足湯のような部分加温では体温はあまり上がりません。(全身を温める深部までの加温効果は期待できない)

  しかし、美肌効果で述べた「42℃洗顔」のように、湯に浸かっている皮膚表面の細胞であれば42℃加温で比較的短時間でも熱ストレスを感受すると思われます。

  効果的な「足湯」を行うには、湯に浸かっている足の皮膚だけではなく、筋肉まで加温した方が良いので、43℃で30分ほど加温した方が良いでしょう。30分の加温では湯温が低下してくるので、たし湯をして43℃を保ちましょう。

  マウスを使っての動物実験では、マウスの下肢の43℃30分の部分加温で、下肢の筋肉のHSPは増加しました。ただし、マウスの体重は約30gと小さく、短時間で加温できるからかもしれません。

 

 Q-7. サウナでも良いですか。

 

 A-7. サウナにもいろいろあるので、一概には言えません。

   色々なサウナがあるようですが、基本的には、HSP入浴法で得られるような体温38℃をこえ(細胞が熱ストレスを感じ)、保温(10-15分間37℃以上を維持して体の芯まで温まり、熱が体にこもる状態)ができれば、HSPは増加すると思われます。

 

 Q-8. HSP入浴法でHSPが増加したか確認したいのですが。

 

A-8. 一般の検査センターではHSPの測定はしてません。簡単に調べることはできません。

        我々のようなHSPの研究をしている施設では測定可能です。一般には、HSPの値は測定できませんが、HSP入浴後いつが一番HSPが高いかを皆さん自身で感じ取ることはできます。

  HSP入浴後は2日後をピークに1~3日後までHSPは高値を示しますが、人によって、1日後、2日後、3日後が最高の人とHSPのピークは異なります。よって、HSP入浴後1~3日間の自分の体調、疲れの度合い、身軽さ、朝の目覚めの状態、階段の上り下りでの疲労など注意して観察してみてください。入浴後のいつが自分にとってベストの日か、その日がHSPの一番高い日に相当します。よって、1日後の人は、ストレスのある日の1日前にHSP入浴を実施すると良いです。

  HSP入浴法の実験で、被検者の方にHSP入浴後、HSPの値を知らせずに体調の一番良い日をアンケートで答えてもらいました。その結果、HSPの値が一番高い日が、その人の体調が一番良い日と一致しました。

 

 Q-9. 入浴後の保温がやっかいなんですが。どうしたらよいですか。

 

A9. 夏と冬でやり方を変えていいですよ。季節にあった保温方法を!

    日本には四季があり、夏と冬では、外気温が30℃近く違います。よって、湯温も夏と冬で(40℃と42℃)変えても良いように(Q-1)、保温の仕方も変えてかまいません。

 

    夏は、外気温が高く、風呂場の室温も高い。風呂場が28℃~30℃以上あれば、入浴後、風呂場で保温を行ってもかまいません。入浴後、体を拭いて、バスタオルをかけて10~15分間休息または軽くA-3に記した運動やストレッチなどしても良い。この間に水分補給してかまいません。もちろん、入浴後、体を拭いて、下着を着て別室で保温してもかまいません。別室の温度が30℃以上であれば、軽くクーラーをつけ(約28℃設定)にしてもかまいません。T-シャツとパンツでかまいません。水分補給を忘れずに。

 

    冬は、外気温が低く、風呂場の室温も低いので、風呂場での保温はすぐ体が冷えてしまいます。よって、入浴後、風呂場で身体についた水をしっかり拭いて出ます(A-4*汗と気化熱に記したように身体についた水1ml当たり約0.6Kcalの熱が奪われるので、水が付いたまま出るとヒヤッと感じます(芯まで温まっていれば、ほとんど感じませんが、熱は奪われています)。または風呂場で下着まで着てしまってもかまいません。別室で衣服(トレーナーやジャケットなど)を着て、靴下をはいて身体が冷えないように保温します。室温は20℃程度に設定したり、ストーブをつけたりして温かくします。身体が冷えるようであれば、温かいショウガ紅茶などで水分補給して体温を維持します。保温時間中にストレッチや運動をしてもかまいません。

 

    夏・冬共に保温では汗が大量に出るので、必ず水分補給をすること。

 保温中に出る汗は、体温調節のための汗で、ほとんどが水分なので、水・お茶などの水分補給で良いのですが、若干は電解質も含まれているので、大量に汗の出る場合はスポーツドリンク(糖分控えめ)や電解質入り(0.8%食塩水でも可)のドリンクでもよいです。

 

*保温では、38℃まで上昇した体温を急速に低下させることなく、37℃台を10~15分維持させます。この間に全身の細胞に熱がいきわたり(熱を付加する)、HSPをつくる準備をします。よって、クーラーや冷たい水を飲んで急激に体温を下げてはいけません。保温終了後であれば、クーラーや冷水もOKです。

 Q-10. 入浴剤を使用した方が良いですか。どんな入浴剤が良いですか。

 

A-10. 入浴剤を使用した方が効果的です。炭酸系の入浴剤が効果的です。

   入浴時間は、42℃で10分、41℃で15分、40℃で20分と、少し長めです(だからHSPが増加するのです)。特に、40℃20分は長いので、もう少し入浴時間を短縮するため入浴剤の検討をしました。

        炭酸は血管を拡張するので、早く身体を温めることができます。実際に、入浴剤「炭酸系入浴剤:ファインヒート(バスクリンのきき湯シリーズ)」の使用で40℃20分の入浴が15分の入浴でもHSPは増加し、免疫活性(NK活性)も有意に増加しました。入浴時間の5分短縮効果は大きいです。また、入浴剤には保温効果もあり、入浴後もポカポカと温かさが持続し、HSP入浴法の保温が確実になります。

 Q-11. HSP入浴法は毎日しなくてもいいのですか。

 

A-11. 毎日しなくてよいです。週に2回で良いですよ。

  HSPはHSP入浴の2日後をピークに1~3日後ごろまで増加します。よって、1回目のHSP入浴で増加したHSPが減少し始める3~4日後に2回目のHSP入浴をするとその2日後にまたHSPが増加し----と、HSPが比較的高い日々が継続できます。例えば、月曜日は最も登校拒否の多い日で、学校や職場に行きたくない日です。この月曜日に元気になるよう土曜日(2日前)にHSP入浴を実施すると月曜日はHSPが増加し、元気に学校や会社に出かけられます。次に、火~水曜日に2回目のHSP入浴を実施すれば木・金も元気に仕事できます。

       低体温の人は、HSP入浴法を毎日1週間ほど続けて下さい。1日おきなら10日~2週間ほど続けて下さい。必ず、基礎体温が0.5℃程上がります。基礎体温が正常値(約36.6℃)に改善したら、週2回のHSP入浴法にして良いですよ。

      ストレスがあるとわかっている日(試合、プレゼン、デート、運動会、登山などここ一番と言う日)の2日前(急な場合は前日でも良い)にはHSP入浴を実施し(週2回の日に当てはまらなくてもよいので)、HSPを高めてストレスに備えましょう!

 

      HSP入浴以外の日は、自分の好みに合わせた入浴法、シャワーでも良いですよ。

   カラスの行水(熱い湯に短時間)、ぬるめで長時間(副交感刺激でゆったり入浴)、アロマの香りを楽しむアロマ入浴、シャワー(できれば湯船に浸かる入浴の方がいいのですが)など、自分の好みに合わせて、日々入浴法を楽しむのも良いですね。でも、健康のための週2日はHSP入浴法にあててください!


 

講演会やお問い合わせで、よく聞かれる質問とそれに対する回答です。参考にしていただければ、幸いです。

 

*HSP入浴法は、ヒートショックプロテイン(HSP)を増加させるために伊藤要子らが実験研究に基づいて確立した入浴法です。まぎらわしい記載には注意して下さい。不明な点、詳細については伊藤要子の著書を参考にしてください。