私たちは仕事や勉強がうまくいかず、目標が達成できなかった時でも、それを乗り越えようと努力し続けることができます。この期待はずれを乗り越えるための“意欲を支える脳の仕組み”を京都大学の小川正晃先生らが動物(ラット)実験で証明しました。従来より、期待どうりうまくいくと、脳内のドーパミンの放出量は増えますが、期待が外れると減ると考えられていました。しかし、この役割では、期待はずれを乗り越える能力の説明ができませんでした。この意欲を支える脳の仕組みは、意欲の異常が深く関与するうつ病や依存性等の精神・神経疾患の新たな解明や治療法の開発につながると期待されています。
1.意欲を支える脳の仕組み
受験や就職試験、昇級試験、試合等一生懸命勉強して合格したり、仕事で成功したりすると、脳内のドーパミン細胞の活動が増しドーパミン放出量が増えて(脳内報酬系の活性化)、嬉しいと感じ、幸せな気持ちになります。反対に目標が達成できないとドーパミン放出量も減り、がっかりまします。しかし、私たちはその悲しみ、落ち込みを乗り越えて、来年の受験のために勉強したり、新しい仕事に挑戦したりと、再度挑戦することができます。
京大研究グループは「期待はずれに対して活性が増すようなドーパミン細胞」が存在すると仮説を立てて研究し、「期待はずれが生じた直後に活動が増すドーパミン細胞」を発見しました。
2.研究方法と結果
・得られるかどうかが不確実な報酬(甘い水)を、ラットが自分から(能動的に)求め続けるように訓練した。
・その結果、ラットはたまたまその報酬が得られずに「期待外れ」が生じても、その後に次の報酬獲得に向けて行動を切り替えることができた。(下図、動課題)
・ドーパミンが増加する細胞は、中脳にあるドーパミン細胞の約半数程度という高い割合で見つかった。
・最新のドーパミン量計測法で、そのドーパミン細胞がある脳の部位で、期待外れが生じた直後にドーパミン量が増加することを見出した。
・さらに光遺伝学法という方法を用いて、期待外れが生じる瞬間に、ドーパミン神経回路の活動を人工的に刺激すると、期待外れを乗り越える行動を駆動することができた。
・以上の結果より、京大研究グループは、期待外れを乗り越える機能を支える新しいドーパミン神経細胞とその神経回路を明らかにした。
この研究を行なった小川先生らのコメントに大変感動しましたので、下記にそのまま掲載します。
3.この研究に携わった研究者のコメント:
本研究の完成という目標に向け、まさしく「期待外れを乗り越える」必要がある状況が、多々ありました。 「途中で諦めてしまっては私たちが見出したドーパミン細胞に対して申し訳ない」という冗談を言いながら、それを乗り越えられるように頑張ってきました。じっくりと年月をかけ、思う存分、納得のいく研究を行える贅沢な環境を与えてくださった、全ての皆様に、深く感謝申し上げます(小川)
(バンダナ先生のコメント:名も知れぬ小さな貧しい研究所で、ドーパミンのおかげで、目標に向かって諦めずに細々と頑張っている研究者もいます。)
4. バンダナ先生から、 “失敗した人、挫折した人、願いが叶わなかった人たちへ”
みなさんも、失敗しても諦めずに頑張ってください。
私たちは、失敗(期待はずれ)を乗り越えるドーパミン細胞を持っているのですから。
でも、それを使うか使わないかは、みなさん次第です!
参考:ドーパミンについて
1)神経伝達物質(神経と神経の情報を伝える物質)の1つです。
ドーパミンは快楽物質、幸せホルモンなどとも呼ばれて、楽しいことをしている時や目標を達成したとき、褒められたときなどに分泌されます。 やる気を出してくれる役割もあります。 ある行為でドーパミンが放出されて幸福感を得ると、脳がそれを学習して、再びその行為をしたくなることもあります。 また、Noさらに大きな幸福感を得ようとして努力をするようになります
2)ドーパミンが増えると
「ドーパミン」という神経伝達物質によってやる気がもたらされています。また、やる気や幸福感だけではなく、多くの生命活動、
特に、感情や、意欲、思考などの心の機能にも大きく関与しています
3)ドーパミンが不足すると
ドーパミン神経が減ると体が動きにくくなり、ふるえが起こったりします。 ドーパミン神経細胞が減少しドーパミンの量が減る理由は
よくわかっていません。パーキンソン病ではドーパミンが減少します。
赤ちゃんが泣き止まない、なかなか寝付かないと困っているママ、パパ
そして孫の赤ちゃんの世話を頼まれたおばあちゃん、おじいちゃん、朗報です!
科学的根拠に基づいた赤ちゃんの泣き止みと寝かしつけの方法が報告されました(理科学研究所:大村・黒田らの国際共同研究グループ) 。2022/9/14理研プレスリリース「赤ちゃんの泣き止みと寝かしつけの科学」を紹介します。
赤ちゃんの寝顔は本当に可愛くて、見てるだけで心も和みますが、 泣き出して抱っこしてあやしてもミルクあげても泣き止まない、やっと泣き止んだと思ってベットに寝かすとまた泣き出す、この繰り返しでお母さんも疲れてしまい、何日も続けばかわいい我が子でもストレスになります。まずは、困ってるお母さんのために結論から
赤ちゃんを効果的に泣き止ませ寝かしつける方法
動きと抱っこの組み合わせ:生後7カ月以下の赤ちゃん21人とその母親の協力を得て実施
問題1.母親が抱っこして歩くことで泣きが減っても、30秒だと歩くのをやめると赤ちゃんはまた泣き始めた。
問題2.抱っこ歩きで赤ちゃんが眠った後も、ベッドに置くと1/3の赤ちゃんは起きてしまう
・そこで、赤ちゃんの状態を心電図と心拍数を測定
・赤ちゃんの心拍数の変化→赤ちゃんの睡眠や覚醒状態を制御する自立神経の活動状態を反映する
結果:1 .寝続けていた2/3の赤ちゃんは、ベッドで寝たほうが抱っこで寝るより、より深い眠りに入った。
問題3.抱っこ歩き5分後、なぜ眠り始めから5~8分座って待ってベッドに置くのか
・眠ってから5分以内にベッドに置かれた場合には、置く途中で目を開けたり、声をだしたり、とかなり起きかける。
・眠ってすぐの睡眠は「ステージ1睡眠」と呼ばれ、眠りが浅くちょっとした物音でも起きてしまう。
・「ステージ1睡眠」の長さが、赤ちゃんでは、平均8分だった。
結果
赤ちゃんが眠り始めてから、5~8分間松と、より深い睡眠に入り、赤ちゃんが起きにくい
抱っこ歩きの注意
・歩く場所は:つまずきやすいものがないたいらなところ、
・抱っこは:手でも、抱っこひも、おんぶひも、使っても良いが、グラグラしないよう赤ちゃんの体と頭を自分の体に付けて支える。
・歩き始めたら急に向きを変えたり不必要に立ち止まったりせず、一定のペースで淡々と5分間ほど歩く。
・5~10分間歩いても赤ちゃんが全く泣き止まない→いつもと違ったところはないが観察する→病気で体の具合が悪い?
そのほかの注意
・育児方法は文化により様々である。
・5分間の輸送(抱っこ歩き)は、今泣いてる赤ちゃんを泣き止ませる即時効果があるが、
普段の育児方法を代替えするものではなく、旅行や親の不在等普段と異なる状況で赤ちゃんが眠いのに寝付けなく、ぐずっている場合に役立つ
上記の資料は、全て2022年9月14日理研のプレスリリースから引用しています。
詳しくは、赤ちゃんの泣きやみと寝かしつけの科学 | 理化学研究所 (riken.jp) を参照ください
バンダナ先生の懐古
バンダナ先生の子供たちは、赤ちゃんの時、夜泣きもなかったのですが、時々ぐずって抱っこしてないと寝付かず、寝たと思って
ベッドに置くとすぐ泣き出し、また抱っこしてベットに置く、と何度も繰り返し、結局一晩中抱っこしていたこともありました。
赤ちゃんが泣くと本能的に母親は抱っこ歩き(輸送)をしますが、“寝てから5~8分間座って待ってからベッドに置く”を知らなかった。あの時『8分待つ』を知っていたらと思います(深夜の8分間は結構長くて短い)。
そして赤ちゃんはベットに置かれる時、抱っこされたお母さんの心臓の音で安心してたのが、お母さんから離れるまさにその時
(不安を感じるのか)、心拍数が高まり赤ちゃんは覚醒しやすくなるのだと思います。これこそ、赤ちゃんとお母さんの絆だと思います。
子供から、待つこと・忍耐を学びました。お母さんは、子供から色々学び、強くなっていきます。
そして時々、子供をしっかり抱きしめて絆を確かめましょう。
赤ちゃんをお持ちのお母さん、赤ちゃんが泣いて寝付かないときは、
5分間の抱っこ歩き(Walk)と、寝入ってから8分間座って待って(Sit)からベッドに赤ちゃんを置いてください。
(この論文ではSitとなっていますが、バンダナ先生としては、SitよりWaitが似合ってると思います。)
大丈夫、頑張れ! お母さん!!
頑張るお母さんに「やったねグリーン缶バッチ」をプレゼントします。
HPのお問い合わせから申し込んでください。
氷が食べたい程暑くもないのに、無性に氷が食べたくなり、毎日たくさん氷を食べる人。
これは、単なる、氷好き、氷を食べる癖、ではなくて「氷食症」という病気かもしれません。
先日、アイスコーヒーの氷をカリコリ食べている人を見かけました。実は、バンダナ先生も若い頃、同じように、コーヒーやジュースに入っている氷を(みんなは残すのに)、カリコリ音を立てて食べていました。氷を見ると、口の中で氷を溶かすのではなく、なんともカリコリと噛んで食べたくなるんです。ちょっと、行儀悪いかなと思う間もなく、食べたくなるんです。コップのガラスを食べるわけではなく、氷もコーヒー代金に入っているのだから違法行為ではありません。ただ、人前で、氷をカリコリすると一気に注目を集めます。同僚から、「先生、貧血じゃないですか?」と聞かれ、「そうかもね」といい加減に答えていました。なんといってもその頃は、貧血よりも金欠の方が心配でしたから。後から、鉄欠乏性貧血(女性の場合、生理で鉄が不足しやすいく貧血になりやすい)になると氷を食べたくなるのだとわかりました。
貧血と金欠はよく似ている、両方重なると結構、やばい!(ダジャレも入ってる)
貧血は体内の酸素不足(酸欠)で体の全細胞の呼吸ができない(個人的影響)。
金欠は日常生活のお金不足で生活ができない(社会的影響)。
生き物のエネルギー(通貨)と言われるATPは酸素がないと作れず生きていけない、お金(通貨)がないと生活できず生きていけない→どちらも生きていく上で必須。「金欠」は病気ではありません。
「無性に氷を食べたくなって密かに悩んでいる人」、「ちょっと氷食べ過ぎかもという人」へ(女性が多い)、その原因と治療法を知って安心してください。
「氷食症」とは、
氷食症は名前のとおり、季節を問わず氷を食べたくなる病気です。通常食べることない栄養のないもの(土、泥、髪の毛、チョークなど)を無性に食べたくなる「異食症」の1つです。
氷食症の定義:
あいまいですが、1日に製氷機一皿以上の氷をカリカリ噛み砕いて、毎日食べる状態が2ヶ月以上続きます。
氷食症の症状:
・氷を多く食べるので、体を冷やし、胃腸を悪くしたり、お腹を下したりします。
・氷食症は高い確率で鉄欠乏を伴うので、鉄欠乏症状(持久力の低下、記憶力の低下、寝起き寝つきの悪さ、食欲低下など)や、貧血症状(顔色不良、動悸、息切れなど)を伴うことが多いです。
・女性に多く、特に思春期や妊婦、授乳婦に見られやすく、近年では、約2割の女性が氷食症を発症していると言われています。特に、月経過多や妊娠、吸収不良、偏食・ダイエットなどによって鉄分が不足しがちなので、氷食症になりやすい。
・男性の氷食症は注意! 女性は生理が原因で鉄不足になることがほとんどですが、男性で氷食症になる人は、胃腸から出血して鉄欠乏を起こすケースもあるので注意。
・日本おいては、鉄欠乏性貧血では、氷食症以外の異食症の症状が現れることは極めて稀と言われています。
・氷食症は、同じ貧血でも鉄欠乏性貧血にのみ見られます。
しかし、氷食症において、貧血は必須条件ではなく、強いストレスによることもある。
また、貧血だからといって、必ず氷食症になるわけではない。
鉄欠乏性貧血になるとなぜ氷を食べたくなるのか!
原因はよくわかっていません。仮説としては、
1.貧血に伴う口腔内の炎症を抑えようとするため
2.貧血で自律神経がうまく働かないことで体温調節が出来ず、口の中の温度が上がったのを冷まそうとしている
3.口腔粘膜や味蕾の変化によるもの
4.氷を噛むことで反射的に脳の血流を増加させようとしている
5.強い精神的ストレスや脅迫観念による
治療法:鉄の補給を適切に行う。
1.鉄剤の注射治療:2~4回の注射で症状が消える人が大半。貧血が改善するより早いタイミングで消失するようです(あびこ内科外科大橋クリニックより)。
2.鉄剤の服用:鉄分の錠剤を1ヶ月程度服用すれば、体内の鉄分が増え、氷食症も改善する。
3.食生活の改善:鉄分が多い食材(ほうれん草、ひじき、レバー、卵黄など)を摂ると、早ければ1ヶ月程度で改善する。
4.鉄分は吸収率の低い栄養素なので、身体への吸収率の良い「ヘム鉄」で摂るとよい。
ヘム鉄は、豚レバー、鶏レバー、あさり、かつおなどの動物性食品(赤身の肉・魚)に多く含まれる
5.対症療法として:氷の多食による体温低下、冷えおよび氷食症の原因の1つである
ストレス予防のためにもHSP入浴法(HP参照)を実施する
付録
貧血のいろいろ:日本人に最も多いタイプは、鉄不足で起こる「鉄欠乏性貧血」(約90%)
貧血とは:赤血球に結合する酸素の量が、体が必要とする酸素の必要量に対して不十分な病態です
貧血の症状:疲れやすい、手足が冷える、頭痛、注意力散漫、耳鳴り、めまい、動悸、息切れ等。
1. 鉄欠乏性貧血:
鉄摂取量の不足、過剰な鉄損失、鉄の吸収阻害などが原因でヘモグロビン(Hb)の主な材料である鉄が不足し、Hbが作られなくなるために起こる貧血。Hbは赤血球の中にあり、全身に酸素を運搬する役割を果たしているので、Hbが不足することで十分な酸素が行き渡らず貧血症状が現れる。
貧血症状以外に鉄欠乏性貧血特有の症状としてスプーン状爪、舌炎、口角炎、そして異食症などが知られている。
2.再生不良性貧血:骨髄で造られる赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気。
3.悪性貧血(巨赤芽球性貧血):ビタミンB12や葉酸の欠乏で起こる。
4.溶血性貧血:赤血球の寿命よりも赤血球膜が早く壊れて起こる。
5. 腎性貧血:腎障害で赤血球を作る時の因子(エリスロポエチン)が腎臓で作れない。
6.慢性疾患に伴う二次性貧血:慢性感染症、慢性炎症、悪性腫瘍などによる炎症性の貧血。
7.その他:加齢による生体機能低下で起きる老人性貧血、亜鉛や銅などの微量栄養素不足による貧血等。
バンダナ先生からコメント
一般に貧血は死ぬほどの病気ではありませんが、ヘモグロビンHb(正常値:男14、女12g/dl)が10以下になると、体がえらい、だるい、しんどい、ふらつき、めまい(いわゆる倦怠感)が起こるので自分は重病人だと思ってしまいます。バンダナ先生もHb8の時は階段を登るのもえらく、すぐ疲れて息切れし、もう死んじゃうのではと内心思いました(バンダナ先生は人前では大きなこと言うのですが、結構気が小さい)。鉄剤の服用で改善しました。
特にがん患者さんは、抗がん剤・放射線・手術等のがん治療で赤血球が減少し貧血になることが多いので、検査値の赤血球(WBC)、ヘモグロビン(Hb)が低い場合(Lや↓の印)を確認してください。つい、疲労感、倦怠感が増すとがんが進行したのではと思いがちですが、貧血による酸素不足が原因のこともあります。
「異食症」
食べものではないものの摂食を1カ月以上にわたり続けている場合に、異食症と診断される。
例としては、氷、土、毛髪、チョークなどで、氷食症、土食症、食毛症という個別の症状名がつけられている。
異食症の原因:脳への酸素不足により、満腹中枢障害や体温調節障害が起こるためと考えられている。 極度の精神的ストレスが原因のことがある。
ストレスによりセロトニン不足となり、感情や欲求が抑制できなくなるのが一因と言われている。
貧血ねずみも氷をかじる(実験) (Science,Vol169:p1334-1336,1970年)
方法1.ねずみから脱血して貧血ねずみにする。
方法2.氷でも水でも好きな方から水分を取れるようにする。
結果1正常ねずみは、45%の水分を氷から摂る。
結果2.貧血ねずみは、96%の水分を氷から摂る。
結果3.貧血ねずみは、氷を舐めるより、かじることが多かった。
結果4.貧血が改善したねずみは、氷には見向きもしなかった。
結論. ねずみも貧血で氷食症になる
貧血の人、足がむずむずしませんか→最近の報告では、鉄欠乏貧血の患者さんはむずむず脚症候群を合併するようです。
氷食症では、身体が冷えるとともに、その原因は貧血とストレスです。
よって、氷食症の人には冷え対策とストレス予防に、ぜひ、HSP入浴法(HP参照)をおすすめします。
寒くなってきました。体の芯まで温まり、免疫を高め、ストレスから私たちを守るHSP入浴法でこの冬を乗り切ろう!!
(結構、良いオチだ!)
“木”も“おなら”をするのか?とびっくりするような記事「木の中にガスパイプライン?―ガス漏れの場所を特定せよ!―」が京都大学の「最新の研究成果」に20220715に公開され、朝日新聞デジタル20220716にも掲載されました。今までのブログでも“おなら” “ウンコ” “オシッコ”と扱ってきたバンダナ先生としても大変興味あるテーマなので、皆さんにもぜひお知らせします。
詳細は、高橋けんし 生存圏研究所准教授、坂部綾香 白眉センター
特定助教、東若菜 神戸大学助教、伊藤雅之 兵庫県立大学准教授
らの研究グループの研究成果は国際学術誌「New Phytologist」にオンライン掲載
(https://doi.org/10.1111/nph.18283)
メタンは二酸化炭素に次ぐ地球温暖化に及ぼす影響が大きい温室効果ガスであり、その地球温暖化への寄与は同じ量の二酸化炭素の28倍と言われています。
近年、湿地に自生する樹木から、これまで知られていなかったほどの大量のメタンが空気中へと放出されているという報告がなされ、植物学や気候科学の分野で大きな論争が巻き起こっています。
I.本当に樹木からメタン(おならの成分)が出ているのか?
出ているならば、どのようなメカニズムなのか?
高橋けんし研究グループの先進技術とクリオ操作型電子顕微鏡を用いての調査結果
1)湿地性樹木のハンノキの幹から大量のメタンが放出されてることを突き止めた。
2)春から秋にかけての葉っぱがついている着葉期間には、メタンの放出量が昼間に増え、夜間に減るという、
季節変化や日内変化を示すことも明らかにした。
3)ハンノキの根の細胞や細胞組織の間に、水が無いミクロな“間隙”(細いガス管)を発見した。
メタンガスが輸送される道筋の1つと考えられる
II. メタンの発生源
1. 人為起源:家畜の牛のげっぷや石炭採掘、ごみの埋め立て処分場など
2. 自然起源:湿地では地中の微生物がつくったメタンが直接地表から放出されるルートのほか、最近は今回の
ような樹木を経由した放出の報告もある。
自然起源のメタンの放出源や量、大気濃度の変動のしくみはまだ詳しくわかっていない。これまで見過ごされてきた放出ルートや量を正確に推定することは、メタンの削減対策を定める上で重要な情報となる。なお、メタンは、主に大気中のOHラジカル(ラジカルとは非常に反応性が高く不安定な分子のこと)と反応し消失する。
III.メタン削減
No.20190627 「おならとゲップの別れ道」にも記載しましたように、牛1頭がゲップやおならとして放出する
メタンガス量は、160~320L/日。また、世界中の牛が出すメタンは二酸化炭素に換算すると全温室効果ガス
の約4%を占めると言われている。
メタン削減に対する対策
1)牛が放出するメタンガスを待機に排出する前に抽出してエネルギー的に有効利用するこころみが、アルゼンチンの農業技術国立研究所で行われている。
2)カシューナッツ殻液(ナッツを包んでいる殻を搾取した液)を配合した飼料を使用
牛は人間が消化することのできない牧草を、エネルギーに変えることができる。それを可能にしているのが、牛の一番目の胃である
ルーメン、そしてルーメン内に生息する微生物が飼料を発行する過程でメタンが発生する。
→カシューナッツ殻液の有効成分がメタンを発生する菌を抑制する→メタンガスは抑制、牛のエネルギ-を生み出す菌は増加
3)メタン発酵とバイオガス生産システムの利用(農林水産省等)
生ゴミ・食品残渣、家畜排泄物をメタン発酵させ、エネルギー電力として、液肥料として利用する。
Ⅳ.木は酸素も排出する
私達は草を食べても消化できない、
牛は草を食べてエネルギーを作り、牛乳・牛肉を提供してくれる。
牛肉うまい!牛乳おいしい!緑大好き!
樹木や家畜の飼育過程から出るメタンを上手く有効利用して、人も牛も樹木も共存していきたい。
1. ダイヤと鉛筆の価値観(図1)
“ダイヤモンド(ダイヤ)と鉛筆、好きな方を選んでくださいと言われたら”、どちらを選びますか1 (1.好きなほう)。
“ダイヤモンドも鉛筆もどちらも1個1000円です、同じ価値だとしたら”、どちらを選びますか2 (2.同じ価値)。
図1は、バンダナ先生の近隣の人たち22名の1 、2 へのアンケート結果です。
当然、1 ならダイヤでしょうと思いきや、約25%は鉛筆を選び、鉛筆を選んだ人の殆どは60歳以上の高齢者。
2のどちらも価値は同じとなると、どちらも50%と同じ。
60歳で分けると(各11名)、60歳以下で 1 でダイヤを選んだ10代を含めた若者達は、
価値が同じ2 でもダイヤを選ぶ。同じ価値とわかっててもダイヤがいい。
60歳以上では1 ではダイヤと鉛筆は半々、価値が同じとなると殆どが鉛筆を選ぶ。
価値が同じ2 では、60歳以上と以下でダイヤと鉛筆が逆転する。
若者と高齢者の価値観が全く違う、興味ある結果だ!!
2.ダイヤと黒鉛(鉛筆の芯)の違い
ダイヤと鉛筆の芯(黒鉛)は、見た目も価値も全く違いますが、実は、どちらも炭素(C)だけでできており、成分的には全く同じものです。このように、同じ元素からなる性質や構造の異なる単体が2種以上存在するものを同素体と言う。ダイヤと黒鉛(鉛筆の芯)は、同素体で炭素だけからできていて、図2のように炭素(緑)の並び方が違うだけなのです。ちなみに、炭素は4本の結合の手(荷電子)を持っている。
2-1ダイヤ
ダイヤは金剛石とも呼ばれ、炭素は4本の結合すべてを最大限に遠ざける図2-3のように正四面体の頂点の方向に配置され、立体的で巨大な構造図2-1を形成する。また、結合自体が非常に強いため極めて硬い。
ダイヤは4個すべてを結合に使っているため、電気を導かず、電気伝導性はない。
2-2.黒鉛(グラファイト:鉛筆の芯)
黒鉛(グラファイト)では、3本の結合すべてを最大限に遠ざける図2-4のように正三角形の頂点の方向に配置され、網目状の平面構造図2-2を作る。また、その平面同士が非常に弱い力で結合し形成されているので、薄くはがれやすく柔らかい。
黒鉛は価電子4個のうち3個を結合に使い、残り1個の電子は自由に移動できるため、電気をよく導き、電気伝導性がある。
3.宝石の王様・ダイヤはなぜすごいのか?
3-1 ダイヤが高価なのは:ダイヤの国際マーケットを支配するデビアス社の商業戦略が功を奏した。
宝石の王様ダイヤの宣伝に、デビアス社はその美しさではなく、無色透明=純潔のシンボル、硬さ=永遠の、両者を合わせダイヤ=永遠の愛として宣伝「ダイヤモンドは永遠の輝き」した。これがダイヤの希少価値よりもダイヤへの憧れで女性の心を虜にし、世界中の婚約指輪(売る人が少ない)の殆どがダイヤとなった。
3-2 史上最大のダイヤは
1905年南アフリカの鉱山で発見されたカリナン原石(3106カラット、620g、体積180ml)で、これをカットした1番目530カラットで王笏(杖 )の頭に付けられ、2番目が320カラットは大英帝国の王冠に付けられている。
3-3 ダイヤは供給過剰?
2011年、全世界のダイヤ生産量は1億3500カラット、27トン、推定埋蔵量は数兆カラットと言われており、希少価値はガラス並み?とも。なぜ、ダイヤの価格が下がらないのか:デビアス社が買い支えているから?
3-4.合成ダイヤ
1984年、最初にダイヤの合成に成功。 2015年では、150億カラットに達し、天然ダイヤの代替えとして需要も増加。殆どが工業用に使われる。
4. 黒鉛:黒い鉛ではない、炭素からできている。
黒鉛の4大特性は、熱耐性、潤滑性、熱・電気伝導性、化学安定性
黒鉛は層状の結晶構造が発達した炭素で、別名石墨とも呼ばれている。4つの特徴を生かした黒鉛製品は、あらゆる産業界に様々な場所で応用されているが、一般の人の目にとまることは殆どない。また、構造的に色々な波長の光を吸収するので、色は黒く見える。
4-1鉛筆の芯:なぜ鉛筆で字が書けるのか
黒鉛は層状構造をしていて層間が滑りやすく、高い潤滑性があり、少しの力で1つの層がほかの層(紙)に対し滑るので、これが筆記時の滑らかさを与える。即ち、鉛筆で字が書けるのは黒鉛の層がずれながら紙に残っていくから。
4-2 鉛筆の歴史
1564年黒鉛が発見され、それを棒状にして使っていた。1795年仏のコンテ氏が黒鉛と粘土を混合する方法を発明し現在の鉛筆の芯の基礎となった。日本で最古の鉛筆は、徳川家康に献上され使われた(久能山の東照宮に保存)と言われている。
4-3 鉛筆の筆記距離
鉛筆1本(HB)で書くことができる筆記距離は約50㎞です。
4-4 鉛筆はなぜ6角形なのか
鉛筆を持つ時は3本指(親指、人差し指、中指)なので、その倍数が正しく握れるとされている。また、ころがり止めでもある。
*色鉛筆に丸軸が多いのは広い面を塗る場合に芯の片側だけが減らないように軸を回しながら使いやすいから。
4-5 なぜ消しゴムで文字が消せるのか
1770年、英国化学者プリーストリー氏が天然ゴムで鉛筆の字が消せる事を発見。
塩化ビニルを原料としたプラスチック消しゴムは1950年代に登場。
紙に付着している力よりも強い力(消しゴムの表面の力)で引っ張ると黒鉛の粉はすぐに紙から剥がれ、消しゴムに付く。消した後は消しゴムの表面は吸い取った黒鉛で真っ黒になり、消しクズとなって捨てられる。
*押さえている手の親指と人差し指で三角形を作り、その中で優しく擦ると、紙を痛めずに消せる。
*色鉛筆が消しゴムで消えにくいのは、色鉛筆の芯の成分が油性だから。
4-6 消しゴム付き鉛筆の発明
1858年米国ハイマン・リップマン氏が、鉛筆に消しゴムをセットすることを思いついた。
5 フラーレン:炭素原子からなるクラスターの総称、天然にはきわめて希に存在
あまり知られていないがちょっと変わった炭素の同素体にフラーレンがある。数十個の炭素原子からなる構造を単位とする炭素の同位体で、1985年最初に発見されたフラーレン(1996年度のノーベル化学賞受賞)は、炭素原子60個で構成されるサッカーボール状のような構造を持ったC60フラーレンです。フラーレンは物理的に極めて安定で、水や有機溶媒に溶けにくい性質を持つが、化学反応性に富み、様々な分野での最先端の機能性素材として注目されている。
6. 炭素:元素記号"C"、原子番号"6"
6-1 他の元素との"結合の手"が4本あり、さまざまな化合物をつくるのが特長
炭素は地球上で多様な状態を示している(炭素循環)。炭素は地殻、海洋、生物圏、大気圏を循環しており、年間の移動量は約2,000億トンと見積もられている。炭素の特性は他の元素と結びついて化合物を作ること。これまでに天然に発見されたものと人工的に作り出した化合物の数は7,000万を超えるといわれているが、その約8割は炭素化合物である。
6-2 炭素は全ての生物の構成材料
炭素-炭素結合で有機物の基本骨格をつくり、すべての生物の構成材料となる。人体を構成する元素の約18%が炭素といわれている。蛋白質、脂質、炭水化物に含まれる原子の過半数が炭素である。光合成や呼吸など生命活動全般で重要な役割を担っている。
6-3 炭素は地球には少ない。
炭素Cは宇宙全体(原子数比)では4番目に多いが、地球全体ではランク外に少ない。また、地表での炭素の重量比も0.08%にすぎないため、生命は自然界にあるわずかな炭素をかき集めてかろうじて成立している、炭素は重要な元素である。
参考:「炭素はすごい」斎藤勝裕著、Tombow「文具の豆3」
あとがき
バンダナ先生としては、貴金属類にあまり興味がないので、1、2ともに大好きな鉛筆を選びました。ダイヤは無くても平気ですが、鉛筆がないと困ります。特に、消しゴムつき鉛筆が好きです。
このブログでもおわかりのように、価値観というのは世間的に作られたものが多く(ダイヤの宣伝文句のように)、世間に刷り込まれていきます。人人に価値観は異なって構いません。また、時代とともに価値観も変わります。
しかし、人は、自分の価値観や考えに合った情報ばかりを集め、合わない情報を排除し、自分が正しいと正当化します。
時々、自分に合わない、反対意見も参考にする心のゆとりを持ちたいものです。
高齢者諸君、つい頑固になり、自分の価値観を人(若者)に押し付けがちですが、気をつけましょう。
若者諸君、君たちもいずれ高齢者です。目の前の高齢者は、君たちの未来です。
高齢者に対する思いやりは、未来の高齢者である君たちへの優しさです。
冬になると、衣服の脱着、車のドアやドアノブに触れた時など「静電気のパチッ」はとても不快ですよね、結構、痛みを感じるくらい(約3KV)の電撃を受けることもあります。私達の身のまわりのものは+や-の電気を持っています。もちろん私達の人体も。そこで今回は、静電気と私たち体のかかわりについて解説したいと思います。
1.普通の電気と静電気の違い
そもそも家庭で使っている電気と静電気はどう違うのか。
電灯をつけたり、機械を動かしたりする電気はエネルギー、
すなわち力で電力と言われるもので、中学で習った電流(A)アンペアx電圧(V)ボルト=電力(W)ワット。そして、家庭で使っている電気は、動電気と言って、常に流れていて溜まることはありません(常に流れているのでコンセントからいつでも取れる)。
静電気は、物と物の摩擦・接触によって発生する電気のことで、帯電(溜まっている状態)したまま動かないので静電気です。静電気は普通の電気の1/1000~1/10000程度しかありません(一瞬しか持たない)。また、静電気は絶縁体の中で次第に電気が溜まる性質があります。静電気はどんなに蓄えておいても、使うときには一瞬でなくなってしまいます。
*絶縁体:プラスチック、ゴムなどの電気を通しにくい物
*導電体:鉄や同など電気を通しやすい物
*静電気では、電気量が非常に少ないので、一瞬、電流が流れるだけで電化製品には利用できません。
よって、持続的に電気が流れ続けるようにと電池が開発されました(最初に作られたのが、ボルタ電池)。
*ちなみに雷は、雲に溜まった静電気が、空気中を一気に流れる自然現象です。
2. 静電気の基礎知識
2-1.静電気はマイナスの電気の移動で生じる
私達の周りにある色々な物、プラスチック、繊維、金属などその素材は様々ですが、全て電気を持っています。人も同じです。
図1-1 どんなものでも+と-の電気を持っており、普通は+と-の電気を同じ数だけ持っており、バランスが取れている。
電気的に中性な状態である。
図1-2 異なる2つの物が衝突(摩擦・接触・剥離)すると。
図1-3 -を引っ張る力が強い方に-の電気が引っ張られ移動する。衝突してバランスが崩れ、どちらかが+に帯電し、もう一方が-に帯電し、静電気を帯びている状態です。
このように、静電気は-の電気の移動で生じ、静電気には+の静電気(A)とーの静電気(B)が存在します。
静電気が+に帯電するか、-に帯電するかは、すり合わせる物の組み合わせに左右されます。
静電気を帯びると、電気的にバランスが悪くなり良い状態に戻ろうとして、-を引っ張る力が強い方に、-の電気が移動します。
図2には、どのような物が、どの程度+または、-に帯電しやすいかをを示した帯電列です。
2-2.静電気の「バチッ」の正体
+に帯電したものとーに帯電したものが近づくと、-に帯電したもののーの電気は、バランスを取り戻そうと、+に帯電した側に戻ります。すなわち、-に帯電した物のマイナスの電気が+に帯電した物に戻る動きを放電(ーの電気の放出)といい、物と物の間に電流が流れ、「パチッ」と電撃をうけます。
表1.に人体への電撃電位と電撃の強さを示します。
静電気の電圧が大きいほど、移動する静電気量が大きくなり電撃の痛み「パチッ」が強くなります。
図3. ドアノブ(導電体)が-に帯電していて、自分が+に帯電している場合
ドアノブのーの電気が自分の手(人間は+に帯電しやすい)に流れ込んで放電がおこり、感電(身体に電気が触れる)し、「パチッ」と痛みを感じます。
ドアノブは電気を通す物質(導電体)なので、人体に溜まっていた静電気はドアノブに流れます。
静電気をゆっくり逃がす木やコンクリート、壁、ドアノブカバーに触れて放電してからドアノブに触る(2-5参照)と、パチッを避けれます。
図4. 髪の毛と下敷き(絶縁体)の静電気
髪の毛と下敷きはそのままでは静電気は発生しません。
しかし、髪の毛と下敷きをこすり合わせると、髪の毛(+に帯電)が下敷き(ーに帯電)にくっついて立ち上がり、静電気が発生します。
しかし、下敷きを手に持っても「パチッ」と放電しません。
下敷きは電気を通さない物質(絶縁体)なので、下敷きに溜まった静電気が人に移動することができないからです。
髪の静電気予防にはトリートメントの使用が効果的(バンダナ先生みたいにアクロヘアーも)
2-5 ガソリンスタンドに設置してある静電気除去シート
図5.静電気除去シート
ガソリンを給油する前に触れる、黒くて丸い静電気除去シートは、人体に溜まった静電気を、ゆっくり逃がすことで「パチッ」の痛みなく静電気を放電します。
おまけ. 電流の流れと電子(-の電気)の流れは逆、おかしいじゃないか!
図3.の-のドアノブの電気は+に帯電してるヒトの手に流れるのに、電流は+のヒトの手から-のドアノブに流れるなんて。
中学生の時、誰でも抱く疑問です(図6)
・電流:電気の+側から-側に向かって流れる
・電子:電気の-側から+側に向かって流れる
逆方向になった理由
・電流が発見された当時(電子の発見の約150年前、何が流れているかまでわかっていなかったので、電流は、+から-に流れると決めた。
・1900年代に入り、電流の正体が電子(-に帯電した電気)であり、定義した電流の向きと逆だった。
・しかし、定義を変えることは混乱を招くので、そのままにされたため混乱しますが、中学生諸君!決め事だと覚えちゃいましょう。
3. 静電気が発生する原因
静電気は、「接触」、「摩擦」、「剥離」の3つが元になって、身の回りの生活の中で色々なところで発生しています。
3-1. 接触帯電
異なる2つの物が接触、ぶつかるとき、片方の-の電気がもう片方へ移動します、これを接触帯電といいます。ただ、接触するだけでも発生します。
3-2. 摩擦帯電
2つの物がこすれ合って静電気が起こる場合を摩擦帯電といいます。
衣服の脱着では、衣類と人体、衣類と衣類が摩擦して-の電気が移動することで発生します。
3-3. 剥離帯電
接触している物が離れる(剥離する)とき、静電気が発生することを剥離帯電といいます。
食品用ラップフィルムの芯に巻きついているフィルムが剥がれるときに静電気が発生します。
シールを台紙からはがす時、シールと台紙の間で、-の電気の移動が起こり、静電気が発生します。
4. なぜ、冬に静電気が発生しやすいのか
4-1. 日常の静電気の放電
一般に体に溜まった静電気は、日常生活で知らないうちに少しずつ放電されていきます。一般に、湿度が65%を超えるとせい電気は発生しにくくなり、発生しても自然に逃げていくと言われています。
空気中の水分が多いところに物体を置くと、物体に溜まった静電気は、物体の表面に付いた水滴や、空気中の水分を伝って自然に静電気が逃げて行きます。最終的には、アースから地面に逃れます。湿度を保つことは、静電気が起こりにくくするのに有効です。
夏は特に湿度が高いので、空気中の水分を通して静電気は自然に放電されます。水は電気を通しやすいため、空気中の水分が多いほど放電されやすいからです。
冬は、乾燥していて空気中の水分が少ないため、静電気が放電されにくくなり、次第に物体に静電気が溜まってしまいます。体に静電気が溜まった状態で、金属製のドアノブなど電気が流れやすい物に触ると、溜まっていた静電気がドアノブに向かって一気に流れ、「パチッ」と痛みを感じます。
部屋が乾燥してると、静電気が空気中の水分に逃げれないので、加湿器などを使用し、湿度50~60%に保ちましょう。静電気は、湿度20%以下、気温20℃以下になると発生しやすくなります。
もう1つの原因は、冬になると様々な素材の衣服を重ね着ることが多くなります。夏であれば綿や麻素材のTシャツなど素材も1~2種類ですが、冬になると合成繊維も加わり、数種類の素材を重ね着して、摩擦が置きやすく静電気が発生しやすいからです。
*夏でも静電気は発生します。エアコンで空調が効いてる場所は、空気が乾燥しています。また、涼しいと湿度の高・低がわからなくなるので、湿度計で湿度をチェックしましょう。
おまけ. 皮膚の乾燥(乾燥肌)
冬は乾燥しており、皮膚からも水分が失われていきます。
図7. 皮膚の乾燥
通常はセラミドと皮脂膜によって、肌の水分量は保持されています。しかし特に加齢、衣服のこすれなどによって、肌の水分が蒸発しやすくなり、セラミドに蓄えられていた水分も失われてしまう状態が乾燥肌です。
健康肌の場合は、静電気は肌の水分を通して日頃から少しずつ放電されますが、乾燥肌の人は静電気が体に溜まりやすくなっており、金属などに触れると「パチッ」と痛みを感じます。
乾燥肌に静電気が起きるとかゆみを増す原因になります。c繊維がより皮膚表面に近いところまで伸びて、わずかな刺激でもかゆみを感じます。水分の補給や肌の保湿にも気をつけましょう!
すりわせる繊維の帯電列で位置が離れているほど強い静電気が発生します。
例えば、アクリルのセーターとナイロンのコートでは静電気は起こりやすく、ナイロンのコートと毛(ウール)のマフラーでは静電気は起こりにくい。
図8. 繊維の帯電列
繊維もその種類によって、+に帯電するか、-に帯電するのかが図8のようにわかっています。
綿や麻などの天然繊維は比較的帯電が少なく、静電気が起こりにくいです。木綿が帯電しにくいのは、発生する静電気が少ないのではなく、木綿の親水性で吸湿量が大きいため電気が比較的流れやすく、発生した静電気が短時間で全体に拡散、またはアースへ流れさってしまうと考えられています。
衣類の静電気予防には1)静電気が起こりにくい素材を選ぶ、2)室内の湿度を約60%にキープ、3)柔軟仕上げ剤(空気中の水分子と結合しやすい)を使用するなどで予防しよう!
6. アース :導電体と絶縁体
金属のように電気を通しやすい物が導電体、プラスチックのように電気を通しにくい物が絶縁体。
2つの接触するものが導電体でも絶縁体でも静電気は発生します。しかし、発生した電気の性質は違います。
3-1. 導電体に発生した静電気
導電体が+か-に帯電していてそのままにしておくと、帯電したままです。しかし、アース(導電体を大地・地球につなぐこと)すると、一瞬で、帯電したていた+または-の電気が地球に逃げていき、静電気がない電気的に安定した状態になります。冷蔵庫などの家電製品にはアース線が配線されていて、アースにつなぐことで、溜まった電気を地球に逃がし、家電製品を電気的に安定した状態にしています。
3-2. 絶縁体に発生した静電気
絶縁体に静電気が発生した場合、導電体とは異なり、アースに接続しても電気は地球に流れません。
絶縁体に発生した静電気をなくすには、静電気除去対策が必要です。
3-3. 静電気除去対策
1)除電器(イオナイザ)
静電気を帯びた物はプラスの電気とマイナスの電気のバランスが崩れた状態なので、バランスが良い状態(電気的に中性な状態)にするのが除電器(イオナイザ)です。
除電器(イオナイザ)は、+イオン、-イオンの両方を発生させ、対象物にぶつけることで静電気を除去します。
2)日常生活での静電気除去対策
・湿度を高くして静電気を溜め込みにくくする。
・保湿材、ハンドクリームなどで手や肌を保湿する。髪にはトリートメント。
・衣類には柔軟剤を使用する。
・衣類の重ね着には、静電気防止スプレーを使用し、衣類の摩擦を防ぐ。
・静電気除去シートを貼る(エレベーターやガソリンスタンドでも利用)。
・静電気除去ブレスレットの使用
冬の静電気「パチッ」の予防には、
適度な湿度を保つ、摩擦を防ぐ、ゆっくり静電気を逃がす物にさわってからドアノブに触れる!
なぜ、体温は37℃なのか、40℃でも30℃でもいいじゃないか?
なぜヒトは、体温が一定の恒温動物に進化したのか、温暖化のためにも、外気温に合わせて体温を変える変温動物でもいいのでは??
2021年ノーベル医学生理学賞受賞は「温度センサーTRPの発見」でした。「温度」はあまりにも日常的で脚光を浴びる話題ではないのですが、体温は1℃違うだけで身体の代謝は大きく違います(ブログNo.20211210「1℃の差が生・死を決める」)。
また、日常生活でも温度センサーの影響を多く受けています(ブログNo.20211125「キムチ鍋は熱いほうが辛い」)。
今回は、「なぜ、体温は37℃か?」という体温の不思議に迫ってみたいと思います。
まずは、温度・体温を論じるために知っておくべき基礎事項を6項目あげ、3つの結論からまとめてみました。
1)変温動物と恒温動物との違い
動物は、トカゲ(爬虫類)、カエル(両生類)、コイ(魚類)、ウナギ(円口類)など外界の温度によって体温が変化する変温動物から、体内で熱を産生し体温を一定に保つ哺乳類などの恒温動物に進化しました。我々恒温動物は、食物を食べ代謝したエネルギーを熱源とし体温を高く維持するために、大量の食物の摂取が必要です。変温動物は、食物から熱を得る割合は少ないが、太陽光から熱を得(日光浴)て体温を上げます。恒温動物が、体温を高く、一定に維持することの意義は何か。
なぜ、変温動物から恒温動物に進化したのか。日光浴で熱を得ていたほうが簡単かもしれませんが、動物は生きていくために、食物を得(餌の獲得)、さらに天敵から逃げ延びなければなりません(常に素早い動きと持続力が必要)。変温動物は、熱産生のための日光浴の時間と敵から逃げ餌を獲得する時間のどちらを優先すべきなのか?です。恒温動物は体内で熱産生し、常に高い体温を維持し、瞬時に高い運動性を発揮し天敵から逃げ延び、餌の捕獲にも便利です
要点1)変温動物より、恒温動物の方が生き延びるに適している
2)人はエネルギーの75%を体温維持のために使用するが、トカゲは日光浴で熱を取り入れ、体温を上げる
人は食べ物からの栄養を代謝体内で起こる化学反応し、最終的にミトコンドリアと言うエネルギー生産工場でというエネルギー通貨に変えて利用しています。体温調節は、外界の温度条件に対する対応という面だけでなく、餌の確保・敵からの回避という生物間の相互作用にも大きな役割をになっています。
**トカゲの天敵はシマヘビです。天敵のシマヘビがいる島のトカゲの平均活動体温は36℃、天敵・シマヘビのいない島のトカゲの平均体温は32℃でした。
トカゲは明らかに天敵から逃げるために高い体温を維持しています。
(参考:東邦大学 生物学の新知識)
要点2)生き延びるためには高いエネルギー、体温が必要。
3)代謝(体の中での化学反応)は、温度が高い方が反応は活発。
温度が高い方が化学反応性は高く、高い運動性が得られます。料理でも熱をかけたほうが早くできるなど自然界の法則です。
よって、体温を高く維持していることは、エネルギーを多く産生でき、高い運動性を維持できます。
要点3)一般に、化学反応は、温度が10℃上がると反応速度は2~3倍上昇する
4)人は外気温(環境温度)に合わせて体温を調節する機能がある。
人は、体温を一定に保つ調節機能(視床下部にある体温中枢)を備えており、熱産生と熱放散の
バランスを保っている。
暑くなれば発汗して熱を放散し、寒くなれば筋肉を収縮させ熱を産生して、体温を一定にしている。
要点4)人の体は、体温調節機能があり、10~20℃の気温変化なら順応して生活できる。
5)人の体温そのものの変化の範囲は気温変化ほど大きくない。
ブログNo.20211210「1℃の差が生・死を決める」で述べたように、一般に、人の細胞の温度の上限は43℃以上では死に、42℃以下では生存するが、下限は34℃以下で死ぬ。
要点5)人の体温は、42℃以下で、35℃以上が安全
6)ミトコンドリアでのエネルギー産生と副産物フリーラジカル発生
エネルギーを生産するミトコンドリアのATP生産速度は温度に依存して高くなるが、このATP生産に伴ってできる副産物の
フリーラジカル(老化・細胞障害・酸化ストレスの素)も温度に依存して高くなる。
すなわち、体温は高いほうがエネルギーは多くできる(利益は高い)が、リスクとしての悪者・フリー
ラジカルも多くできる。よって、その折り合い(リスクの最小化)が37℃である。
(参照:東邦大学 生物学の新知識 長谷川雅美)
要点6)体温は、利益(エネルギー)とリスク(悪者・フリーラジカル)の折り合う点=37℃となる
1~6項目のまとめ
I. 体温は、生命が脅かされる43℃から十分に離れ(少々の発熱で43℃にならない)、
34℃より高い温度となる。
II. 人の細胞は、アレニウスプロット(ブログNo.20211210)から、屈折点(細胞が死ぬ温度)43℃です。一般にその細胞の適温は、屈折点より6~7℃低いので、最適温度=37~36℃となる。
III. 体温は、エネルギー・ATP産生という利益の最大化とフリーラジカルというリスクの最小化となる温度・37℃となる。
以上、生物進化的、温度化学反応速度的、エネルギー産生での利益とリスクの観点から、
体温は、37℃が最適と思われる!
PS:
バンダナ先生は、先日、3回目のコロナワクチンを摂取しました。その夜から、少々、ふしぶしが痛くなってきました。発熱の前兆だなと、夕食は、おもっきし沢山食べ、さらにパン・クッキー・果物も食べ、エネルギー補給準備万端。
予想どうり、翌朝から微熱、想定内のことなので、薬は飲まないと思っていたのですが、やはり、食欲もなく、発熱でえらくて我慢できずPL顆粒(風邪薬)を飲み、ハアーハアー言いながら、その日は早めに帰り寝ました。体が熱くて、水分補給とトイレとでなかなか寝た気がしませんでしたが、6:28(6:30からラジオ体操)のアラームで目覚めた時には、随分よくなっていました。
お風呂で体温を38℃に上げるのは、さほどえらくはないのですが(外から熱をもらうので)、自発熱(自分で体内で熱を作る)で38℃に上がるのは結構つらいし、エネルギーも相当必要です。くしゃみ1回の消費カロリーは4Kcal(100m走と同じかロリー)、咳は1回2Kcal消費します。
発熱するな、風邪かも、と感じたら、しっかり食事を取ってエネルギーを蓄えておきましょう!
2021年ノーベル医学生理学賞温度センサーTRPV1の43℃が 「がん」を殺す
先のブログN0.20211126「キムチ鍋は熱いほうが辛い」で、2021年ノーベル医学生理学賞は温度感受センサーTRPの発見者デビッド・ジュリアス博士が受賞したことを報告しました。
温度感受センサーの1つであるTRPV1は、43℃以上の熱刺激で活性化されるとともに、唐辛子の成分カプサイシンや酸、痛みのセンサーでもあります。
なぜ43℃なのか、43℃って何か意味があるのか?
43℃は、温熱生理学では大いに意味ありの温度です。
実は、 細胞は42℃なら生きているが、43℃になると死んでしまうのです。
43℃は細胞の生と死を決める重要な温度(限界温度)です。
42℃と43℃ではたった1℃の差ですが、細胞にとっては生きるか死ぬかの分かれ道なのです。
43℃以上が痛みとなって感じられるのは、ヒトは“痛い”と感じればそれを避けようとするので、
傷害や死を避けようとする合理的な仕組みで、それを温度センサーTRPV1が担っています。
がんの温熱療法の仕組み
1.温度と細胞
図1は、温熱生理学ではとても有名な温度と細胞の生存の関係を示したグラフです。
細胞は42℃では生存、43℃では死
細胞の生・死は1℃の差で決まる
正常組織は加温しても熱は血流で放散する。
がん組織は加温で熱がこもり、温度が上がる。
がんは死んで(43℃以上に)、正常は生存(40℃)に加温する
グラフの横軸は「加温時間(分)」です。縦軸は「対数目盛の生きている細胞の数」です。
40℃や41.5℃では、500分加温しても生きている細胞の数は殆ど減少せず、細胞は死にません。42℃でも200分後にやや減少しますが500分まで変わらず細胞は生きています。42.5℃になると加温時間とともに直線的に生きてる細胞の数が減少し、400分後には10000個の細胞が1個になってしまいます。さらに43℃では、加温と同時に細胞は急激に減少し、100分後には10000個の細胞が100個に減少し(1%生存)、その後全滅します。すなわち、42℃では殆どの細胞は生きているが43℃では殆どの細胞が死んでしまいます。
これは、43℃以上に温度を上げると、細胞の核の中のDNAにある細胞死(アポトーシス)を誘導する遺伝子が発現し(43℃以下ではOFFになっているが、43℃以上になるとONになる)、細胞を死へ導くからです。
*細胞の核にあるDNAには2-3万個の遺伝子があります。それらの遺伝子は、全部がON(発現)しているわけではなく、必要な遺伝子のみがONになっており、必要でない遺伝子はDNAに存在しますが、OFF(発現してない、働かないで休んでいる)の状態になっています。
例えば、心臓の細胞も2-3万個の全ての遺伝子を持っています。2-3万個の遺伝子のうち、心臓の働きに必要な遺伝子はONとなり働いていますが、他の肝臓や腎臓等の働きに必要な遺伝子はOFFになっています。
2.がんと43℃
いろいろな現象を治療に利用するには、42℃と43℃のような1℃の差で細胞を生と死に分けることは大変有意義な手段です。
43℃以上でがん細胞だけ死んで、正常細胞は生きていればがん治療に利用できるのですが、43℃以上ではがん細胞も正常細胞も死んでしまい、これだけではがんの温熱療法には利用できません。限界温度の43℃を利用する温度変化だけでがんを殺すことはできません。そこで、次に重要になってくるのが、正常組織とがん組織の血管系の違いです。
3.がんと血管系
図2.は、正常組織とがん組織の血管系の違いを表した図です。
図2ピンクの□の部位を加温すると正常組織の血管は拡張し、血流は速くなり、加温した部位の熱はすぐに血流で運び去られ、加温部位の温度は正常に戻ります。しかし、がん組織では、がん細胞自身が増殖するために栄養や酸素を多く取り入れようと、がんが放出する血管増殖因子により、新しい血管がどんどん作られます(これを*血管新生という)。しかし、正常血管とは異なり、がんの作る血管はもろく、熱を加えても拡張しません。よって、図2ピンクの□のがん組織を加温すると、血流で熱が運び去られず、熱が加温部位にとどまり、がん組織は熱がこもって温度が上がり熱くなります。即ち、がん組織を43℃以上に熱くすれば、がんは死滅します。
例えば、正常組織と癌組織を同じ43℃で加温すると、正常組織では熱は血流にのって逃げ(放散)て、42℃、41℃、40℃と温度が下がり、正常細胞は死にません。しかし、癌組織では熱がこもり43℃になりがん細胞は死滅します。
このように、がんの温熱療法では、正常組織と癌組織の血管系の違いと加温した時の両者の温度の差を利用して治療に適用しています。
*血管新生阻害剤:癌の増殖を抑制するがん治療薬の1つ。
癌細胞は自身の栄養供給のため新しい血管を作り周りから栄養を奪い増殖していく。よって、この癌細胞の血管新生を阻止すれば、癌細胞への栄養供給が阻まれ、癌は増殖できない(癌細胞自身を死滅させることはできないが、栄養不足で大きくなれません、うまくいけば栄養失調で死ぬ)。
一般に、温度が高いほど速く反応します (料理でも熱すると速い)。
無機物の化学反応は高温側に制限が少ないですが、生きている生物にとっては、適温があり、温度に依存します。生き物にとって、生命活動の大きな決定因子の1つが気温・温度・熱です。
生き物の最小構成単位は細胞です。ヒトは37兆個の細胞から出来ています。その細胞が死ぬ温度とは、何℃なのか?
図3は、図1と同じですが、横軸に絶対温度の逆数(処理温度)をとり、縦軸は図1と同じく細胞生存率を対数目盛でとったアレニウスプロットです。
42.5℃で折れ曲がる(屈折点)、2相性の折れ線グラフとなります。即ち、屈折点42.5℃のところで、細胞は温度に対して大きなエネルギー変化が起こっていることを示します。細胞は温度変化に対し、42.5℃までは、1130KJ/molの大きなエネルギーが必要ですが、42.5℃を越すと、643KJ/molと約1/2に減少し、細胞は死に始めます。細胞は42℃では生存し、43℃では死滅する-1℃の差が生死を決める。生物種によって、屈折点は異なりますが、36-37℃付近で培養するヒトの細胞及び多くの細胞は42.5℃に屈折点を持ちます。しかし、どんな細胞も屈折点(生死の分岐温度)と細胞の生存に最適な温度との差が、約6~7℃です。(これは興味深い現象なので、別のブログ:なぜ体温は37℃かで説明)なんと、生き物が熱ストレスを感じてヒートショックプロテイン(HSP)を増加させる温度が、屈折点42.5℃付近なのです!
即ち、HSP入浴法の温度42℃、41℃、40℃なのです(42.5℃以上では細胞が死にはじめるので42℃以下で熱ストレスを感じる温度、42~40℃となります)。HSPは、ストレスで細胞が死なないように私たち、生き物をストレスから守ってくれます。
HSP入浴法はサイエンスに基づいた入浴法なのです。
今日も、HSP入浴法でサイエンスの香りを味わいながら、元気になってください!
-その理由は、2021年ノーベル医学生理学賞・温度を感じるセンサーの発見-
2021年ノーベル医学生理学賞は、温度を感じるセンサー(温度受容体)を発見したデビッド・ジュリアス博士と硬さや手触り等機械的刺激を感じるセンサー(触覚受容体)を発見したアーデム・パタプティアン博士が受賞しました。
キムチ鍋は苦手なバンダナ先生ですが、今回は、この温度に反応するセンサー(温度受容体:TRP:Transient receptor potential channel)が、実際に私たちの生活の中でどんなに大切な役割を果たしているかを実例とともに紹介します。
1.熱い湯に指を入れた時になぜ“熱い”と感じるのか、冷たい氷に触った時になぜ“冷たい”と感じるのか?
私たちは、四季折々、「冷たい・寒い(cold)」、「涼しい(cool)」、「暖かい(warm)」、「熱い・暑い(hot)」など,様々な温度を感じて過ごしており,意識的・無意識的にそれに対応しています。図2のように、外界の温度センサーの場合,感覚神経の末端が温度による刺激(熱い、冷たい)を電気信号(活動電位)に変換して、その情報が脳(中枢)へと伝達されます。
2.温度を感じる温度センサー(温度受容体:TRPV1)の発見
ジュリアス博士らは、最初,痛み、熱,触覚に反応する神経細胞の遺伝子を調べており,これに対応した数百万種類のDNA断片を準備し、1遺伝子ずつに,唐辛子の辛味成分カプサイシンを加えて細胞の応答を調べました(結構、研究者の仕事って、何回も同じ実験を繰り返す、じみな仕事なんです)。その結果、カプサイシンで活発な反応を示したのが TRPV1というたんぱく質(図1、2の赤色)の遺伝子でした(1997年発見)。
3.唐辛子(カプサイシン)のセンサーと温度(43℃以上)のセンサーは同じ温度感受性センサー(TRPV1)です。
図2.感覚神経終末における刺激の受容と伝達の仕組み
(富永真琴)(一部改変)
図1のように、唐辛子成分のカプサイシンが温度センサー(TRPV1)に結合すると活性化され、ナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞内に流れ込み、電気信号が発生し(脱分極)、細胞が興奮して、脳に辛さが伝わります。
このTRPV1は、カプサイシンだけでなく、43℃以上の熱や痛み、酸でも反応することが分かりました。よって、唐辛子(カプサイシン)の熱感は、カプサイシンが43℃以上の温度を感知するTRPV1を活性化することによって起こります。すなわち、辛味のセンサーは、温度のセンサーでもあり、辛さのhotと熱さのhotは同じ仕組みで感じるわけです、ホットでホッと。
また、43℃という温度は、細胞が生きるか死ぬかの限界温度(別号で解説)であり、43℃以上が痛みとなって感じられるのは、私たちが高熱による“危険”をさけるために大変都合よくできています。
その後、TRPV1と類似した温度センサーが図3のごとく多数発見されました。またこれらの温度センサーは、資料1にあるように様々なスパイス、植物・漢方薬の成分によっても活性化されます。料理やアロマで使用するスパイスは単なる香辛料としてだけでなく、温度センサーに作用することで、身体の生理作用(例:カプサイシンはTRPV1を活性化して糖質代謝を亢進する)にも影響することが明らかになってきました。
4.哺乳類では、冷たい温度から熱い温度までをカバーする各種温度感受性TRPセンサーが存在*する。
*(2004年,富永真琴:温度受容の分子機構-TRPチャネル温度センサー,日本薬理学雑誌)
そして、温度刺激だけでなく様々な植物、スパイス・アロマ成分が温度感受性TRPセンサーを活性化することがわかりました。
よって、生姜や、ぺパーミントや、ローズマリーや、シナモンや、ワサビが、あたかも温度が変化したかのように感じさせるのです。
1) TRPV1:唐辛子の成分カプサイシン、生姜の成分ジンゲロール、酸、痛み、熱(43℃以上の温度を感受)
唐辛子を食べると、口の中の感覚神経に存在するTRPV1に辛み成分・カプサイシンが反応し、温度感覚と痛覚が刺激されるとともに、スパイスが持つ香りと相まって、スパイス独特の風味がもたらされ、それらを脳で統合しておいしさを感じます。(舌以外にあるTRPV1ではカプサイシンの刺激を辛味ではなく痛みとして感知します。)
また、興味深いことに、43℃以上の熱刺激を感受するTRPV1を活性化するカプサイシンを食べると、熱産生(熱を作る)と熱放散(熱を逃がす)が同時に起こります。すなわち、カプサイシンは、エネルギー代謝を盛んにして熱を作り熱くなるとともに、顔が赤くなったり、汗をかいて熱を逃がしているわけです。
コメント:辛味は味覚ではなく感覚です。
辛味は、5味(甘味、酸味、苦味、塩味、うま味)には含まれません。これら5味は水溶性で舌にある味蕾で感じます。
唐辛子の辛味・カプサイシンは脂溶性で、上皮細胞の下にある感覚神経のTRPV1に作用して辛味を感じます。
コメント:甘味、酸味、苦味、塩味、うま味(5味)はすぐ感じるが、辛味は後から感じる。
5味は水溶性で直ぐに味蕾に届き味を感じますが、辛味は脂溶性で温度感受性センサーTRPV1に届くまで少し時間がかかるので、
少し後から辛味を感じます。
コメント:甘味、酸味、苦味、塩味、うま味(5味)は水を飲むとすぐ味が消えるが、辛味は水を飲んでも消えません。
5味は水溶性なので水で味が薄まりますが、カプサイシンは脂溶性なので水に溶けず、辛味が残ります。
2)TRPM8:ペパーミントの成分メントール、ローズマリーの成分シネオール、清涼感(25-28℃以下の温度を感受)
ミントを食べると、ミントの成分・メントールが、口の中のTRPM8(28℃以下の温度の清涼感)を刺激し、スーと感じます。
この時は、熱放散は抑えられ、熱産生が高まります。
3)TRPA1:ワサビの成分アリルイソチオシアネート、シナモンの成分シンナムアルデヒド、冷感(17℃以下の温度を感受)
ワサビを食べると、ワサビ成分アリルイソチオシアネートがTRPA1(17℃以下の温度を感受)を刺激し、鼻をつく冷感を感じます。この時は、熱放散が抑えられ、熱産生が高まります。
すなわち、高い温度を感知するセンサーTRPV1をカプサイシンで活性化すると、体を冷ます方向に体温が調節され、冷たい温度を感知するセンサーTRPM8, TRPA1をメントールやワサビ、シナモンで活性化させると、体を温める方向に体温調節がかかり、私たちの体温を一定に保つうえで、理にかなった反応です。
また、多くの植物由来物質が温度感覚をもたらしたり、痛み感覚に関与しており、漢方薬にも生姜、山椒、桂皮等TRPセンサーを活性化する物質が含まれており、生薬の薬効とTRPセンサーが関与しています。
5.温度感受性センサー(TRP)と植物やスパイスや温度刺激の日常生活における例
温度感受性センサーTRPは、単独で刺激した場合より、例えば、TRPV1の場合、辛み刺激・唐辛子と熱刺激・43℃以上を同時に加えると、より活性化されます。
1)キムチ鍋は熱いほうがより辛い
キムチのカプサイシン(辛み刺激)と鍋の熱刺激(43℃以上)が同時に作用し、より熱く、より辛く感じる。更に辛く、熱く、なれば痛みも感じる。
2)紅茶に生姜を入れるとより温かい。
紅茶も熱刺激(43℃以上)と生姜成分ジンゲロール(辛み)が同時に作用し、より温かく感じる
3)激辛カレーは冷たいとあまり辛くない
冷えた激辛カレーは、カレーの中の唐辛子の成分カプサイシンの刺激しかないので(熱刺激がない)、あまり辛いとは感じない。
4)寒い冬には温まるために、靴下や肌着に唐辛子を入れる。
唐辛子成分カプサイシンがTRPV1を活性化し熱感をもたらすとともに、交感神経を介して熱産生も引き起こすことから温まる。
5)ミントに触れると本来冷たくなくても、冷たいと感じる。アイスクリームにミントを加えるとより冷たく感じる。
ミントの成分メントールがTRPM8を活性化し、清涼感を感じる
6)口の中の傷は治りやすい。
口の中の上皮細胞にはTRPV3が多くあり、このTRPV3が口の中の温度で活性化され、治癒を促進する。
重要なのは、2021年ノーベル医学生理学賞受賞研究の温度感受性TRPセンサ―(チャネル)は、それぞれの温度以外の刺激でも活性化するということです。植物成分や痛み、酸、脂質などの複数の刺激(活性化刺激)により活性化され、資料1に示した疾患(関連疾患)や、生命活動の重要な機能に関与しています。
温度感受性TRPセンサーは、外気の温度変化を感じる皮膚のみでなく、深部体温を感じる細胞にも存在します(発現部位)。すなわち、TRPV1は感覚神経、TRPV2は感覚神経や免疫細胞、TRPV3は皮膚や感覚神経、TRPV4は皮膚、TRPM5は味覚細胞、TRPM2は免疫細胞や膵臓、TRPM8は感覚神経や前立腺、TRPA1は感覚神経や腸管に多く存在します。
特に、免疫細胞にも温度感受性センサーがあるということは、やはり、温度、すなわち加温が免疫細胞の活性化にも重要であることの1つの証と思われます。
改めて、私たちの体は、温度に左右されることが沢山あり、昔から知らないうちに、生活の中で「温度」が結構生かされていて重要だなと感じます。
なんてったって、寒い冬はやっぱり温かいお風呂、
HSP入浴法で芯まで温まるのが最高!と思う次第です。
そして、近い将来、HSPにもノーベル賞が!
-人は温かさを感じると温かい反応をする-
心理学の有名な話で、温熱に関するとても興味深い話を紹介します。
「温かい飲み物を持つと、相手のことを温かい人間だと感じる」という話です。
オリジナルは有名な科学雑誌Science 2008 年
「Experiencing Physical Warmth Promotes Interpersonal Warmth」に掲載されました。
身体的な温かさを感じると(物理的温かさ)、目の前の人のことも優しい、穏やかな温かい人間だと感じてしまう(心理的温かさ)というのです。これには、2 つの実験が紹介されています。
実験1.ホットコーヒーとアイスコーヒー:温度で人の評価が変わった。
41 人の大学生にホットコーヒまたはアイスコーヒーのどちらかを手渡しします。
そして、Aという人物の資料を読んでAがどんな性格か
10 項目の評価をしてもらいました。その結果、
*温かいコーヒーではAのことを「やさしい、穏やか」と評価しました。
*冷たいコーヒーではA のことを「やさしくない、利己的」と評価しました。
すなわち、物理的な温かさが人物評価によい影響を与えることが示されました。
実験2.ホットパッドとコールドパッド:温度で他人に対する行動・感性も変わった。
53 人の別の大学生に製品評価を装って、ホットパッドまたはコールドパッドを渡し評価の後、その報酬として2 つの選択肢を与えました。
1. 自分用のドリンクまたはアイスクリーム券
2. 友達用のドリンクまたはアイスクリーム券
その結果、ホットパッドを渡された参加者は、約54%が友達用を選び、コールドパッドでは約75%が自分用を選びました。
物理的な暖かさは、報酬の種類に関係なく、個人的な報酬より、友人への(社会的報酬)を選んだのです。
温かさは、人の判断だけでなく、他人に対する行動にも影響を与えることが示されました。
2 つの実験結果から、
“人は温度変化によって、優しくなったり、利己的になったり行動が変わる” ということが示唆されたわけです。
デートの時、すかざずホットコーヒーを注文して相手に飲んでもらえば、自分のことをやさしい良い人だと評価がえられるかも!
恋人ゲット! 温かさが、相手の心を開かせるかもしれません。
著者は、身体のどこかの温度が変わると、脳のインスラ(島皮質)という部分で感じ取り、インスラは“温まる”という変化に対して “気分が和らぐ”というように反応すると言っています。最後に著者は、幼児期の母親からの温かい愛が、人間関係における温かさと成人の行動の正常な発達に不可欠だとも述べています。
そして、10 年経て、2018 年に
オリジナルよりも3 倍以上被験者を増やし、学生以外も対象とし、現実に近い形で追試実験が行われました。
その結果、2018 年の追試実験ではホットコーヒーの効果が得られませんでした------失敗、残念。
スモールスケールで効果があってもラージスケールにすると統計学的に効果がでなくなることは、時々あります。
特に、心理学の研究はあまり再現性が高くありません。大人数では個々人の誤差も大きくなります、年齢差(高齢者では熱感受性が鈍い)も出てきます、実験室レベルで実施していたのが大きな部屋で実施すれば集中できないし、雰囲気も違ってきます。
でも、10 年前の結果は結果で、その条件下では正しかったのです。
バンダナ先生としては、
実験ではコーヒーをもっていた時間は短時間です。温める時間を長くして温度差をちゃんと感受できれば、成功するのではと期待しています。 ホットコーヒではないが、お風呂に入り湯に浸かると、“ホットする”、あの瞬間、あのホット感は心を優しくしてくれます。
体が、外気温(20-30℃)から湯温(40-42℃)に浸り、温度変化を感受することにより、著者いわく“インスラ”により気分が和らぐのかもしれません。また、40-42℃の湯に浸かるとエンドルフィン(脳内麻薬)が分泌され、良い気分になったり、痛みが緩和したりすることが知られています(お風呂に入ると腰痛や筋肉痛が和らぐ)。
世界中の人がお風呂に入り、優しい気持ちになったら、
戦争やいがみ合いも許せる気持ちになるかもしれない!
やっぱり、戦場にもお風呂タイムが必要だ!
災害の被災地にもまずはお風呂を設置しよう!
大げさかもしれないが、お風呂が平和をもたらす一助になるかも知れない!
幸せを感じよう! 自分はハッピーだと心で思おう! そうすれば体が、全身が温かくなる!
図1. 感情変化と体温マッピング(2013 年 The Atlantic)
図1.は、フィンランド、スウェーデン、台湾の700 人のボランティアを対象に、様々な感情の下で「体温」がどのように変化するのかを調査した結果です。感情の変化で体温がかなりはっきり変化しているのがよくわかります------感激!
「愛・恋してる」時は下肢を除いて特に顔・胸部・腹部が温かく、「幸福」に感じてる時は頭から手足の先まで全身が温かくなります。
「落ち込んだ」時は、手足の先まで全身が冷たくなります。「悲しい」時は、胸部のみ熱く、手足は冷えます。「怒り・恐怖・嫌悪・誇り」では顔と手と上半身のみに熱が集まります。「驚き・不安・恥らい・嫉妬」では、顔は熱く手足は冷たくなります。
“結果”
・感情によって、体温が変わる。(落ち込むと体温が下がって、幸せだと体温が上昇する)
・体温変化は結構、明確に表れる。
・下半身は上半身とは相反するように現れる。
・頭部に熱が行きやすく、下半身は熱が届きにくい傾向がある。
・怒り、恐怖、嫌悪・驚き・嫉妬などでは、顔付近の温度が上がり、呼吸数や、脈拍増加と一致する。
・ポジティブな感情や、対外へ向けた感情が起こった際には体温が上昇する。
・落ち込みといった、極端に内側へ向いた感情が起こった際には体温が低下する。
・国籍が違っても似たような結果が得られたということから、人間の感情は人種や言葉の違いを超えて共通している。
写真を見て、「やっぱりそうか、バッチリ当たってる!」と思った人も多いと思います、
最近、“どうやって、心の変化が体の変化(体温変化)につながるのか”という科学的根拠が明らかにされました。
2020 年Science に掲載された名古屋大学の中村先生の「心と体をつなぐ心身相関の仕組み」で解明されました。
脳の中に、心理的なストレスや喜怒哀楽などの情動をつかさどる「心」の領域(大脳皮質)から、「体」の状態を調節する領域(視床下部)へ、ストレス信号を伝達する「心身相関」の伝達路が発見されました。例えば、心理ストレス(心)を受けると交感神経が活性化して、脈拍、血圧、体温が上昇する(体)ことは誰もが経験することです。この脳内の「心の神経回路」と「体を調節する神経回路」をつなぐ(心身相関)カギとなる神経回路(DP/DTT 領域にある)の存在と仕組みが、ネズミの実験で明らかにされました。パニック障害・心的外傷後ストレス障害等はストレスや情動が交感神経を活性化する心身相関によって発症するス疾患です。 これらストレス疾患に対する根本的治療法の開発につながる可能性が期待されています。また、がん患者さんの症状緩和のための心理療法、しいては、「病は気から」と言われる現象が心身相関から解明されるかもしれません。
今年の冬は、毎年流行するインフルエンザの心配だけでなく、なかなか収束を見ない新型コロナウィルス(COVID-19)と同時流行する「ツインデミック」の可能性も懸念されています。さらに、風邪にも気を付けなければなりません。新型コロナ感染症も、風邪やインフルエンザなどと同様に「発熱」や「咳」、「倦怠感」などが主な症状で、症状だけでこの3つを区別するのは実際には困難です。発熱するだけで「新型コロナウィルスに感染したのでは」と不安に思う方が多いと思います。
下記の新型コロナ・インフルエンザ・風邪の違いを参考にしてください。
・特にひき始めは一般の風邪、インフルエンザ、新型コロナの感染症状は区別がつかないことが多い
・発熱、咳、頭痛、だるさ、筋肉痛の症状は3者で見られる
・新型コロナとインフルエンザはどちらも呼吸器感染症なので、症状が似ている
・息切れ、嗅覚・味覚障害の症状は新型コロナに特徴的と言えるが、必ずみられるというわけではない
・くしゃみ、下痢、鼻水の症状は新型コロナでは少ない
・原因ウィルスが違う:インフルエンザは、インフルエンザウィルスに、新型コロナは新型コロナウィルスに感染すると発症する。風邪も80%~90%はウィルス感染ですが、風邪の原因ウィルスは特定なものはなく、約10種(ライノウィルス;冬、アデノウィルス;年中、コロナウィルス;冬~春、RSウィルス;11~3月、バレインフルエンザウィルス;3~7月)あると言われている。風邪は、ウィルス以外でも細菌、マイコプラズマ、寒冷刺激でも発症する。
”体を冷やすと風邪をひく”の根拠:寒さがライノウィルスに抵抗する免疫力を低下させ、風邪をひくリスクを増大させる。
・ワクチンの違い:インフルエンザワクチンを接種したからといって、新型コロナや風邪を予防できるわけではない。それぞれを発症させるウィルスが違うので、2つまたは3つに感染する可能性もある。新型コロナウィルスワクチンに関しては、開発・治験がすすみ、順次認証されつつあり、接種可能となる日も近いが、副作用など心配な点もある。
新型コロナとインフルエンザの相違点
・潜伏期が違う:インフルエンザが1~4日、新型コロナが1~14日です。
・症状の持続期間が違う:インフルエンザでは1週間程度で改善するが、新型コロナでは2~3週間以上のこともある。
・感染性の違い:新型コロナウィルス感染症では発症する前にも他の人に感染をうつしてしまうことがあり、発症後に感染性のインフルエンザと大きく違う。
・致死率の違い:インフルエンザ;0.01~0.1%(年間1000万人が罹患し、1000人~10000人が死亡)、新型コロナ;3~5%が死亡
・治療薬の違い:どちらも抗ウィルス剤を使用するが、インフルエンザはタミフル、新型コロナはレムデシビル(WHOは否定的)など開発中