バンダナ先生・伊藤要子のブログ


No.20220211  静電気と人体

冬になると、衣服の脱着、車のドアやドアノブに触れた時など「静電気のパチッ」はとても不快ですよね、結構、痛みを感じるくらい(約3KV)の電撃を受けることもあります。私達の身のまわりのものは+や-の電気を持っています。もちろん私達の人体も。そこで今回は、静電気と私たち体のかかわりについて解説したいと思います。

 1.普通の電気と静電気の違い                   

そもそも家庭で使っている電気と静電気はどう違うのか。

電灯をつけたり、機械を動かしたりする電気はエネルギー、

すなわち力で電力と言われるもので、中学で習った電流(A)アンペアx電圧(V)ボルト=電力(W)ワット。そして、家庭で使っている電気は、動電気と言って、常に流れていて溜まることはありません(常に流れているのでコンセントからいつでも取れる)

静電気は、物と物の摩擦・接触によって発生する電気のことで、帯電(溜まっている状態)したまま動かないので静電気です。静電気は普通の電気の1/1000~1/10000程度しかありません(一瞬しか持たない)。また、静電気は絶縁体の中で次第に電気が溜まる性質があります。静電気はどんなに蓄えておいても、使うときには一瞬でなくなってしまいます。

 

*絶縁体:プラスチック、ゴムなどの電気を通しにくい物

*導電体:鉄や同など電気を通しやすい物

 

*静電気では、電気量が非常に少ないので、一瞬、電流が流れるだけで電化製品には利用できません。

 よって、持続的に電気が流れ続けるようにと電池が開発されました(最初に作られたのが、ボルタ電池)

*ちなみに雷は、雲に溜まった静電気が、空気中を一気に流れる自然現象です。

 

2. 静電気の基礎知識

2-1.静電気はマイナスの電気の移動で生じる

私達の周りにある色々な物、プラスチック、繊維、金属などその素材は様々ですが、全て電気を持っています。人も同じです。

図1-1 どんなものでも+と-の電気を持っており、普通は+と-の電気を同じ数だけ持っており、バランスが取れている。

電気的に中性な状態である

 

図1-2 異なる2つの物が衝突(摩擦・接触・剥離)すると。

 

図1-3 -を引っ張る力が強い方に-の電気が引っ張られ移動する。衝突してバランスが崩れ、どちらかが+に帯電し、もう一方が-に帯電し、静電気を帯びている状態です。

 

このように、静電気は-の電気の移動で生じ、静電気には+の静電気(A)とーの静電気(B)が存在します。

静電気が+に帯電するか、-に帯電するかは、すり合わせる物の組み合わせに左右されます。

 

静電気を帯びると、電気的にバランスが悪くなり良い状態に戻ろうとして、-を引っ張る力が強い方に、-の電気が移動します。

2には、どのような物が、どの程度+または、-に帯電しやすいかをを示した帯電列です。

2-2.静電気の「バチッ」の正体

+に帯電したものとーに帯電したものが近づくと、-に帯電したもののーの電気は、バランスを取り戻そうと、+に帯電した側に戻ります。すなわち、-に帯電した物のマイナスの電気が+に帯電した物に戻る動きを放電(ーの電気の放出)といい物と物の間に電流が流れ、「パチッ」と電撃をうけます

表1.に人体への電撃電位と電撃の強さを示します。

静電気の電圧が大きいほど、移動する静電気量が大きくなり電撃の痛み「パチッ」が強くなります。

図3. ドアノブ(導電体)が-に帯電していて、自分が+に帯電している場合

ドアノブのーの電気が自分の手(人間は+に帯電しやすい)に流れ込んで放電がおこり、感電(身体に電気が触れる)し、「パチッ」と痛みを感じます。

ドアノブは電気を通す物質(導電体)なので、人体に溜まっていた静電気はドアノブに流れます。

静電気をゆっくり逃がす木やコンクリート、壁、ドアノブカバーに触れて放電してからドアノブに触る(2-5参照)と、パチッを避けれます。

図4. 髪の毛と下敷き(絶縁体)の静電気

髪の毛と下敷きはそのままでは静電気は発生しません。

しかし、髪の毛と下敷きをこすり合わせると、髪の毛(+に帯電)が下敷き(ーに帯電)にくっついて立ち上がり、静電気が発生します。

しかし、下敷きを手に持っても「パチッ」と放電しません。

下敷きは電気を通さない物質(絶縁体)なので、下敷きに溜まった静電気が人に移動することができないからです。

髪の静電気予防にはトリートメントの使用が効果的(バンダナ先生みたいにアクロヘアーも)

2-5 ガソリンスタンドに設置してある静電気除去シート

図5.静電気除去シート

ガソリンを給油する前に触れる、黒くて丸い静電気除去シートは、人体に溜まった静電気を、ゆっくり逃がすことで「パチッ」の痛みなく静電気を放電します。

おまけ. 電流の流れと電子(-の電気)の流れは逆、おかしいじゃないか!

図3.の-のドアノブの電気は+に帯電してるヒトの手に流れるのに、電流は+のヒトの手から-のドアノブに流れるなんて。

中学生の時、誰でも抱く疑問です(図6)

・電流:電気の+側から-側に向かって流れる       

・電子:電気の-側から+側に向かって流れる

逆方向になった理由

・電流が発見された当時(電子の発見の約150年前、何が流れているかまでわかっていなかったので、電流は、+から-に流れると決めた。

・1900年代に入り、電流の正体が電子(-に帯電した電気)であり、定義した電流の向きと逆だった。

・しかし、定義を変えることは混乱を招くので、そのままにされたため混乱しますが、中学生諸君!決め事だと覚えちゃいましょう。

3. 静電気が発生する原因

静電気は、「接触」、「摩擦」、「剥離」の3つが元になって、身の回りの生活の中で色々なところで発生しています。

 

3-1. 接触帯電

異なる2つの物が接触、ぶつかるとき、片方の-の電気がもう片方へ移動します、これを接触帯電といいます。ただ、接触するだけでも発生します。

 

3-2. 摩擦帯電

2つの物がこすれ合って静電気が起こる場合を摩擦帯電といいます。

衣服の脱着では、衣類と人体、衣類と衣類が摩擦して-の電気が移動することで発生します。

3-3. 剥離帯電

接触している物が離れる(剥離する)とき、静電気が発生することを剥離帯電といいます。      

食品用ラップフィルムの芯に巻きついているフィルムが剥がれるときに静電気が発生します。

シールを台紙からはがす時、シールと台紙の間で、-の電気の移動が起こり、静電気が発生します。

4. なぜ、冬に静電気が発生しやすいのか

 

4-1. 日常の静電気の放電

一般に体に溜まった静電気は、日常生活で知らないうちに少しずつ放電されていきます。一般に、湿度が65%を超えるとせい電気は発生しにくくなり、発生しても自然に逃げていくと言われています。

空気中の水分が多いところに物体を置くと、物体に溜まった静電気は、物体の表面に付いた水滴や、空気中の水分を伝って自然に静電気が逃げて行きます。最終的には、アースから地面に逃れます。湿度を保つことは、静電気が起こりにくくするのに有効です。

は特に湿度が高いので、空気中の水分を通して静電気は自然に放電されます。水は電気を通しやすいため、空気中の水分が多いほど放電されやすいからです。

は、乾燥していて空気中の水分が少ないため、静電気が放電されにくくなり、次第に物体に静電気が溜まってしまいます。体に静電気が溜まった状態で、金属製のドアノブなど電気が流れやすい物に触ると、溜まっていた静電気がドアノブに向かって一気に流れ、「パチッ」と痛みを感じます。

部屋が乾燥してると、静電気が空気中の水分に逃げれないので、加湿器などを使用し、湿度5060%に保ちましょう。静電気は、湿度20%以下、気温20℃以下になると発生しやすくなります。

もう1つの原因は、冬になると様々な素材の衣服を重ね着ることが多くなります。夏であれば綿や麻素材のTシャツなど素材も1~2種類ですが、冬になると合成繊維も加わり、数種類の素材を重ね着して、摩擦が置きやすく静電気が発生しやすいからです。

 

*夏でも静電気は発生します。エアコンで空調が効いてる場所は、空気が乾燥しています。また、涼しいと湿度の高・低がわからなくなるので、湿度計で湿度をチェックしましょう。

おまけ.  皮膚の乾燥(乾燥肌)

冬は乾燥しており、皮膚からも水分が失われていきます。

図7. 皮膚の乾燥

通常はセラミドと皮脂膜によって、肌の水分量は保持されています。しかし特に加齢、衣服のこすれなどによって、肌の水分が蒸発しやすくなり、セラミドに蓄えられていた水分も失われてしまう状態が乾燥肌です。

健康肌の場合は、静電気は肌の水分を通して日頃から少しずつ放電されますが、乾燥肌の人は静電気が体に溜まりやすくなっており、金属などに触れると「パチッ」と痛みを感じます。

乾燥肌に静電気が起きるとかゆみを増す原因になります。c繊維がより皮膚表面に近いところまで伸びて、わずかな刺激でもかゆみを感じます。水分の補給や肌の保湿にも気をつけましょう!

すりわせる繊維の帯電列で位置が離れているほど強い静電気が発生します。

例えば、アクリルのセーターとナイロンのコートでは静電気は起こりやすく、ナイロンのコートと毛(ウール)のマフラーでは静電気は起こりにくい。

8. 繊維の帯電列

繊維もその種類によって、+に帯電するか、-に帯電するのかが図8のようにわかっています。

綿や麻などの天然繊維は比較的帯電が少なく、静電気が起こりにくいです。木綿が帯電しにくいのは、発生する静電気が少ないのではなく、木綿の親水性で吸湿量が大きいため電気が比較的流れやすく、発生した静電気が短時間で全体に拡散、またはアースへ流れさってしまうと考えられています。

衣類の静電気予防には1)静電気が起こりにくい素材を選ぶ、2)室内の湿度を約60%にキープ、3)柔軟仕上げ剤(空気中の水分子と結合しやすい)を使用するなどで予防しよう!

 

6. アース :導電体と絶縁体

 

金属のように電気を通しやすい物が導電体、プラスチックのように電気を通しにくい物が絶縁体。

2つの接触するものが導電体でも絶縁体でも静電気は発生します。しかし、発生した電気の性質は違います。

3-1. 導電体に発生した静電気

 

導電体が+か-に帯電していてそのままにしておくと、帯電したままです。しかし、アース(導電体を大地・地球につなぐこと)すると、一瞬で、帯電したていた+または-の電気が地球に逃げていき、静電気がない電気的に安定した状態になります。冷蔵庫などの家電製品にはアース線が配線されていて、アースにつなぐことで、溜まった電気を地球に逃がし、家電製品を電気的に安定した状態にしています。

 

3-2. 絶縁体に発生した静電気

絶縁体に静電気が発生した場合、導電体とは異なり、アースに接続しても電気は地球に流れません。

絶縁体に発生した静電気をなくすには、静電気除去対策が必要です。

 

3-3. 静電気除去対策

 

1)除電器(イオナイザ)

 

静電気を帯びた物はプラスの電気とマイナスの電気のバランスが崩れた状態なので、バランスが良い状態(電気的に中性な状態)にするのが除電器(イオナイザ)です。

除電器(イオナイザ)は、+イオン、-イオンの両方を発生させ、対象物にぶつけることで静電気を除去します。

 

2)日常生活での静電気除去対策

 

・湿度を高くして静電気を溜め込みにくくする。

・保湿材、ハンドクリームなどで手や肌を保湿する。髪にはトリートメント。

・衣類には柔軟剤を使用する。

・衣類の重ね着には、静電気防止スプレーを使用し、衣類の摩擦を防ぐ。

・静電気除去シートを貼る(エレベーターやガソリンスタンドでも利用)。

・静電気除去ブレスレットの使用

冬の静電気「パチッ」の予防には、

適度な湿度を保つ、摩擦を防ぐ、ゆっくり静電気を逃がす物にさわってからドアノブに触れる!

No.20220114 なぜ、体温は37℃か?

なぜ、体温は37℃なのか、40℃でも30℃でもいいじゃないか?

 なぜヒトは、体温が一定の恒温動物に進化したのか、温暖化のためにも、外気温に合わせて体温を変える変温動物でもいいのでは??

 

2021年ノーベル医学生理学賞受賞は「温度センサーTRPの発見」でした。「温度」はあまりにも日常的で脚光を浴びる話題ではないのですが、体温は1℃違うだけで身体の代謝は大きく違います(ブログNo.20211210「1℃の差が生・死を決める」)。

また、日常生活でも温度センサーの影響を多く受けています(ブログNo.20211125「キムチ鍋は熱いほうが辛い」)。

今回は、「なぜ、体温は37℃か?」という体温の不思議に迫ってみたいと思います。

 

まずは、温度・体温を論じるために知っておくべき基礎事項を6項目あげ、3つの結論からまとめてみました。

 

1)変温動物と恒温動物との違い

 動物は、トカゲ(爬虫類)、カエル(両生類)、コイ(魚類)、ウナギ(円口類)など外界の温度によって体温が変化する変温動物から、体内で熱を産生し体温を一定に保つ哺乳類などの恒温動物に進化しました。我々恒温動物は、食物を食べ代謝したエネルギーを熱源とし体温を高く維持するために、大量の食物の摂取が必要です。変温動物は、食物から熱を得る割合は少ないが、太陽光から熱を得(日光浴)て体温を上げます。恒温動物が、体温を高く、一定に維持することの意義は何か。

 

 なぜ、変温動物から恒温動物に進化したのか。日光浴で熱を得ていたほうが簡単かもしれませんが、動物は生きていくために、食物を得(餌の獲得)、さらに天敵から逃げ延びなければなりません(常に素早い動きと持続力が必要)。変温動物は、熱産生のための日光浴の時間と敵から逃げ餌を獲得する時間のどちらを優先すべきなのか?です。恒温動物は体内で熱産生し、常に高い体温を維持し、瞬時に高い運動性を発揮し天敵から逃げ延び、餌の捕獲にも便利です

要点1)変温動物より、恒温動物の方が生き延びるに適している

 

2)人はエネルギーの75%を体温維持のために使用するが、トカゲは日光浴で熱を取り入れ、体温を上げる

 人は食べ物からの栄養を代謝体内で起こる化学反応し、最終的にミトコンドリアと言うエネルギー生産工場でというエネルギー通貨に変えて利用しています。体温調節は、外界の温度条件に対する対応という面だけでなく、餌の確保・敵からの回避という生物間の相互作用にも大きな役割をになっています。

**トカゲの天敵はシマヘビです。天敵のシマヘビがいる島のトカゲの平均活動体温は36℃、天敵・シマヘビのいない島のトカゲの平均体温は32℃でした。 

トカゲは明らかに天敵から逃げるために高い体温を維持しています。

(参考:東邦大学 生物学の新知識)

要点2)生き延びるためには高いエネルギー、体温が必要。

3)代謝(体の中での化学反応)は、温度が高い方が反応は活発。

温度が高い方が化学反応性は高く、高い運動性が得られます。料理でも熱をかけたほうが早くできるなど自然界の法則です。

よって、体温を高く維持していることは、エネルギーを多く産生でき、高い運動性を維持できます。

要点3)一般に、化学反応は、温度が10℃上がると反応速度は23倍上昇する

4)人は外気温(環境温度)に合わせて体温を調節する機能がある。

 人は、体温を一定に保つ調節機能(視床下部にある体温中枢)を備えており、熱産生と熱放散の

バランスを保っている。

 暑くなれば発汗して熱を放散し、寒くなれば筋肉を収縮させ熱を産生して、体温を一定にしている。

要点4)人の体は、体温調節機能があり、10~20℃の気温変化なら順応して生活できる。

 

 

5)人の体温そのものの変化の範囲は気温変化ほど大きくない。

ブログNo.20211210「1℃の差が生・死を決める」で述べたように、一般に、人の細胞の温度の上限は43℃以上では死に、42℃以下では生存するが、下限は34℃以下で死ぬ。       

要点5)人の体温は、42℃以下で、35℃以上が安全

6)ミトコンドリアでのエネルギー産生と副産物フリーラジカル発生

 エネルギーを生産するミトコンドリアのATP生産速度は温度に依存して高くなるが、このATP生産に伴ってできる副産物の

フリーラジカル(老化・細胞障害・酸化ストレスの素)も温度に依存して高くなる。

 すなわち、体温は高いほうがエネルギーは多くできる(利益は高い)が、リスクとしての悪者・フリー

ラジカルも多くできる。よって、その折り合い(リスクの最小化)が37℃である。

 (参照:東邦大学 生物学の新知識 長谷川雅美)                                       

要点6)体温は、利益(エネルギー)とリスク(悪者・フリーラジカル)の折り合う点=37℃となる

16項目のまとめ

I. 体温は、生命が脅かされる43℃から十分に離れ(少々の発熱で43℃にならない)、   

34℃より高い温度となる。

II. 人の細胞は、アレニウスプロット(ブログNo.20211210)から、屈折点(細胞が死ぬ温度)43℃です。一般にその細胞の適温は、屈折点より6~7℃低いので、最適温度=37~36℃となる。

III. 体温は、エネルギー・ATP産生という利益の最大化とフリーラジカルというリスクの最小化となる温度・37℃となる

 

以上、生物進化的、温度化学反応速度的、エネルギー産生での利益とリスクの観点から、

 

体温は、37℃が最適と思われる!

PS

バンダナ先生は、先日、3回目のコロナワクチンを摂取しました。その夜から、少々、ふしぶしが痛くなってきました。発熱の前兆だなと、夕食は、おもっきし沢山食べ、さらにパン・クッキー・果物も食べ、エネルギー補給準備万端。

予想どうり、翌朝から微熱、想定内のことなので、薬は飲まないと思っていたのですが、やはり、食欲もなく、発熱でえらくて我慢できずPL顆粒(風邪薬)を飲み、ハアーハアー言いながら、その日は早めに帰り寝ました。体が熱くて、水分補給とトイレとでなかなか寝た気がしませんでしたが、628(6:30からラジオ体操)のアラームで目覚めた時には、随分よくなっていました。

 お風呂で体温を38℃に上げるのは、さほどえらくはないのですが(外から熱をもらうので)、自発熱(自分で体内で熱を作る)38℃に上がるのは結構つらいし、エネルギーも相当必要です。くしゃみ1回の消費カロリーは4Kcal(100m走と同じかロリー)、咳は12Kcal消費します。

 

         発熱するな、風邪かも、と感じたら、しっかり食事を取ってエネルギーを蓄えておきましょう!

 

No.20211210 たった1℃の差が生・死を決める

2021年ノーベル医学生理学賞温度センサーTRPV143℃が 「がん」を殺す

 

先のブログN0.20211126「キムチ鍋は熱いほうが辛い」で、2021年ノーベル医学生理学賞は温度感受センサーTRP発見者デビッド・ジュリアス博士が受賞したことを報告しました。

温度感受センサーの1つであるTRPV1は、43℃以上の熱刺激で活性化されるとともに、唐辛子の成分カプサイシンや酸、痛みのセンサーでもあります。

 

なぜ43℃なのか、43℃って何か意味があるのか?

43℃は、温熱生理学では大いに意味ありの温度です。

実は、 細胞は42℃なら生きているが、43℃になると死んでしまうのです。

43℃は細胞の生と死を決める重要な温度(限界温度)です。

42℃と43℃ではたった1℃の差ですが、細胞にとっては生きるか死ぬかの分かれ道なのです。

 

43℃以上が痛みとなって感じられるのは、ヒトは“痛い”と感じればそれを避けようとするので、

傷害や死を避けようとする合理的な仕組みで、それを温度センサーTRPV1が担っています。

がんの温熱療法の仕組み                                     

1.温度と細胞

1は、温熱生理学ではとても有名な温度と細胞の生存の関係を示したグラフです。

細胞は42℃では生存、43℃では死

細胞の生・死は1℃の差で決まる

 

正常組織は加温しても熱は血流で放散する。

がん組織は加温で熱がこもり、温度が上がる。

がんは死んで(43℃以上に)、正常は生存(40℃)に加温する

 


グラフの横軸は「加温時間()」です。縦軸は「対数目盛の生きている細胞の数」です。

40℃や41.5℃では、500分加温しても生きている細胞の数は殆ど減少せず、細胞は死にません。42℃でも200分後にやや減少しますが500分まで変わらず細胞は生きています。42.5℃になると加温時間とともに直線的に生きてる細胞の数が減少し、400分後には10000個の細胞が1個になってしまいます。さらに43℃では、加温と同時に細胞は急激に減少し、100分後には10000個の細胞が100個に減少し(1%生存)、その後全滅します。すなわち、42℃では殆どの細胞は生きているが43℃では殆どの細胞が死んでしまいます。

 

 これは、43℃以上に温度を上げると、細胞の核の中のDNAにある細胞死(アポトーシス)を誘導する遺伝子が発現し(43℃以下ではOFFになっているが、43℃以上になるとONになる)、細胞を死へ導くからです。

*細胞の核にあるDNAには2-3万個の遺伝子があります。それらの遺伝子は、全部がON(発現)しているわけではなく、必要な遺伝子のみがONになっており、必要でない遺伝子はDNAに存在しますが、OFF(発現してない、働かないで休んでいる)の状態になっています。

例えば、心臓の細胞も2-3万個の全ての遺伝子を持っています。2-3万個の遺伝子のうち、心臓の働きに必要な遺伝子はONとなり働いていますが、他の肝臓や腎臓等の働きに必要な遺伝子はOFFになっています。

2.がんと43

 いろいろな現象を治療に利用するには、42℃と43℃のような1℃の差で細胞を生と死に分けることは大変有意義な手段です。

 43℃以上でがん細胞だけ死んで、正常細胞は生きていればがん治療に利用できるのですが、43℃以上ではがん細胞も正常細胞も死んでしまい、これだけではがんの温熱療法には利用できません。限界温度の43℃を利用する温度変化だけでがんを殺すことはできません。そこで、次に重要になってくるのが、正常組織とがん組織の血管系の違いです。

3.がんと血管系

 図2.は、正常組織とがん組織の血管系の違いを表した図です。

 図2ピンクの□の部位を加温すると正常組織の血管は拡張し、血流は速くなり、加温した部位の熱はすぐに血流で運び去られ、加温部位の温度は正常に戻りますしかし、がん組織では、がん細胞自身が増殖するために栄養や酸素を多く取り入れようと、がんが放出する血管増殖因子により、新しい血管がどんどん作られます(これを*血管新生という)。しかし、正常血管とは異なり、がんの作る血管はもろく、熱を加えても拡張しません。よって、図2ピンクの□のがん組織を加温すると、血流で熱が運び去られず、熱が加温部位にとどまり、がん組織は熱がこもって温度が上がり熱くなります。即ち、がん組織を43℃以上に熱くすれば、がんは死滅します。

 例えば、正常組織と癌組織を同じ43℃で加温すると、正常組織では熱は血流にのって逃げ(放散)て、42℃、41℃、40℃と温度が下がり、正常細胞は死にません。しかし、癌組織では熱がこもり43℃になりがん細胞は死滅します。

 このように、がんの温熱療法では、正常組織と癌組織の血管系の違いと加温した時の両者の温度の差を利用して治療に適用しています。

*血管新生阻害剤:癌の増殖を抑制するがん治療薬の1つ。

 

癌細胞は自身の栄養供給のため新しい血管を作り周りから栄養を奪い増殖していく。よって、この癌細胞の血管新生を阻止すれば、癌細胞への栄養供給が阻まれ、癌は増殖できない(癌細胞自身を死滅させることはできないが、栄養不足で大きくなれません、うまくいけば栄養失調で死ぬ)。

一般に、温度が高いほど速く反応します (料理でも熱すると速い)

無機物の化学反応は高温側に制限が少ないですが、生きている生物にとっては、適温があり、温度に依存します。生き物にとって、生命活動の大きな決定因子の1つが気温・温度・熱です。

生き物の最小構成単位は細胞です。ヒトは37兆個の細胞から出来ています。その細胞が死ぬ温度とは、何℃なのか?

3は、図1と同じですが、横軸に絶対温度の逆数(処理温度)をとり、縦軸は図1と同じく細胞生存率を対数目盛でとったアレニウスプロットです。

 

42.5℃で折れ曲がる(屈折点)2相性の折れ線グラフとなります。即ち、屈折点42.5℃のところで、細胞は温度に対して大きなエネルギー変化が起こっていることを示します。細胞は温度変化に対し、42.5℃までは、1130KJ/molの大きなエネルギーが必要ですが、42.5℃を越すと、643KJ/molと約1/2に減少し、細胞は死に始めます。細胞は42℃では生存し、43℃では死滅する-1℃の差が生死を決める。生物種によって、屈折点は異なりますが、36-37℃付近で培養するヒトの細胞及び多くの細胞は42.5℃に屈折点を持ちます。しかし、どんな細胞も屈折点(生死の分岐温度)と細胞の生存に最適な温度との差が、約67℃です。(これは興味深い現象なので、別のブログ:なぜ体温は37℃かで説明)なんと、生き物が熱ストレスを感じてヒートショックプロテイン(HSP)を増加させる温度が、屈折点42.5℃付近なのです!

 

即ち、HSP入浴法の温度42℃、41℃、40℃なのです(42.5℃以上では細胞が死にはじめるので42℃以下で熱ストレスを感じる温度、4240℃となります)HSPは、ストレスで細胞が死なないように私たち、生き物をストレスから守ってくれます。

HSP入浴法はサイエンスに基づいた入浴法なのです。

 

今日も、HSP入浴法でサイエンスの香りを味わいながら、元気になってください!

No.202111125 キムチ鍋は熱いほうが辛い!

-その理由は、2021年ノーベル医学生理学賞・温度を感じるセンサーの発見- 

 

2021年ノーベル医学生理学賞は、温度を感じるセンサー(温度受容体)を発見したデビッド・ジュリアス博士と硬さや手触り等機械的刺激を感じるセンサー(触覚受容体)を発見したアーデム・パタプティアン博士が受賞しました。

キムチ鍋は苦手なバンダナ先生ですが、今回は、この温度に反応するセンサー(温度受容体:TRPTransient receptor potential channel)が、実際に私たちの生活の中でどんなに大切な役割を果たしているかを実例とともに紹介します。

 

1.熱い湯に指を入れた時になぜ“熱い”と感じるのか、冷たい氷に触った時になぜ“冷たい”と感じるのか?

 私たちは、四季折々、「冷たい・寒い(cold)」、「涼しい(cool)」、「暖かい(warm)」、「熱い・暑い(hot)」など,様々な温度を感じて過ごしており,意識的・無意識的にそれに対応しています。図2のように、外界の温度センサーの場合,感覚神経の末端が温度による刺激(熱い、冷たい)を電気信号(活動電位)に変換して、その情報が脳(中枢)へと伝達されます。

 

2.温度を感じる温度センサー(温度受容体:TRPV1)の発見

 ジュリアス博士らは、最初,痛み、熱,触覚に反応する神経細胞の遺伝子を調べており,これに対応した数百万種類のDNA断片を準備し、1遺伝子ずつに,唐辛子の辛味成分カプサイシンを加えて細胞の応答を調べました(結構、研究者の仕事って、何回も同じ実験を繰り返す、じみな仕事なんです)。その結果、カプサイシンで活発な反応を示したのが TRPV1というたんぱく質(12の赤色)の遺伝子でした(1997年発見)

 

3.唐辛子(カプサイシン)のセンサーと温度(43℃以上)のセンサーは同じ温度感受性センサー(TRPV1)です。

図2.感覚神経終末における刺激の受容と伝達の仕組み

(富永真琴)(一部改変)


1のように、唐辛子成分のカプサイシンが温度センサー(TRPV1)に結合すると活性化され、ナトリウムイオンやカルシウムイオンが細胞内に流れ込み、電気信号が発生し(脱分極)、細胞が興奮して、脳に辛さが伝わります。

 このTRPV1は、カプサイシンだけでなく、43℃以上の熱や痛み、酸でも反応することが分かりました。よって、唐辛子(カプサイシン)の熱感は、カプサイシンが43℃以上の温度を感知するTRPV1を活性化することによって起こります。すなわち、辛味のセンサーは、温度のセンサーでもあり、辛さのhotと熱さのhotは同じ仕組みで感じるわけです、ホットでホッと。

また、43℃という温度は、細胞が生きるか死ぬかの限界温度(別号で解説)であり、43℃以上が痛みとなって感じられるのは、私たちが高熱による“危険”をさけるために大変都合よくできています。

 その後、TRPV1と類似した温度センサーが図3のごとく多数発見されました。またこれらの温度センサーは、資料1にあるように様々なスパイス、植物・漢方薬の成分によっても活性化されます。料理やアロマで使用するスパイスは単なる香辛料としてだけでなく、温度センサーに作用することで、身体の生理作用(例:カプサイシンはTRPV1を活性化して糖質代謝を亢進する)にも影響することが明らかになってきました。

 

4.哺乳類では、冷たい温度から熱い温度までをカバーする各種温度感受性TRPセンサーが存在*する

*(2004,富永真琴:温度受容の分子機構-TRPチャネル温度センサー,日本薬理学雑誌)

  そして、温度刺激だけでなく様々な植物、スパイス・アロマ成分が温度感受性TRPセンサーを活性化することがわかりました。

  よって、生姜や、ぺパーミントや、ローズマリーや、シナモンや、ワサビが、あたかも温度が変化したかのように感じさせるのです

 

1) TRPV1:唐辛子の成分カプサイシン、生姜の成分ジンゲロール、酸、痛み、(43℃以上の温度を感受)

唐辛子を食べると、口の中の感覚神経に存在するTRPV1に辛み成分・カプサイシンが反応し、温度感覚と痛覚が刺激されるとともに、スパイスが持つ香りと相まって、スパイス独特の風味がもたらされ、それらを脳で統合しておいしさを感じます。(舌以外にあるTRPV1ではカプサイシンの刺激を辛味ではなく痛みとして感知します。)

また、興味深いことに、43℃以上の熱刺激を感受するTRPV1を活性化するカプサイシンを食べると、熱産生(熱を作る)と熱放散(熱を逃がす)が同時に起こります。すなわち、カプサイシンは、エネルギー代謝を盛んにして熱を作り熱くなるとともに、顔が赤くなったり、汗をかいて熱を逃がしているわけです。

 

コメント辛味は味覚ではなく感覚です。

辛味は、5味(甘味、酸味、苦味、塩味、うま味)には含まれません。これら5味は水溶性で舌にある味蕾で感じます

唐辛子の辛味・カプサイシンは脂溶性で、上皮細胞の下にある感覚神経のTRPV1に作用して辛味を感じます

 

コメント:甘味、酸味、苦味、塩味、うま味(5)はすぐ感じるが、辛味は後から感じる。

5味は水溶性で直ぐに味蕾に届き味を感じますが、辛味は脂溶性で温度感受性センサーTRPV1に届くまで少し時間がかかるので、

少し後から辛味を感じます。

 

 コメント:甘味、酸味、苦味、塩味、うま味(5)は水を飲むとすぐ味が消えるが、辛味は水を飲んでも消えません。

 5味は水溶性なので水で味が薄まりますが、カプサイシンは脂溶性なので水に溶けず、辛味が残ります。

 

2TRPM8:ペパーミントの成分メントール、ローズマリーの成分シネオール、清涼感(25-28℃以下の温度を感受)

ミントを食べると、ミントの成分・メントールが、口の中のTRPM8(28℃以下の温度の清涼感)を刺激し、スーと感じます。

この時は、熱放散は抑えられ、熱産生が高まります。

 

3TRPA1:ワサビの成分アリルイソチオシアネート、シナモンの成分シンナムアルデヒド、冷感(17℃以下の温度を感受)

 

ワサビを食べると、ワサビ成分アリルイソチオシアネートがTRPA1(17℃以下の温度を感受)を刺激し、鼻をつく冷感を感じます。この時は、熱放散が抑えられ、熱産生が高まります。

 

 すなわち、高い温度を感知するセンサーTRPV1をカプサイシンで活性化すると、体を冷ます方向に体温が調節され冷たい温度を感知するセンサーTRPM8, TRPA1をメントールやワサビ、シナモンで活性化させると、体を温める方向に体温調節がかかり、私たちの体温を一定に保つうえで、理にかなった反応です。

 

また、多くの植物由来物質が温度感覚をもたらしたり、痛み感覚に関与しており漢方薬にも生姜、山椒、桂皮等TRPセンサーを活性化する物質が含まれており、生薬の薬効とTRPセンサーが関与しています

 

 

5.温度感受性センサー(TRP)と植物やスパイスや温度刺激の日常生活における例

 

 温度感受性センサーTRPは、単独で刺激した場合より、例えば、TRPV1の場合、辛み刺激・唐辛子と熱刺激・43℃以上を同時に加えると、より活性化されます。

 

 

1)キムチ鍋は熱いほうがより辛い

 

  キムチのカプサイシン(辛み刺激)と鍋の熱刺激(43℃以上)が同時に作用し、より熱く、より辛く感じる。更に辛く、熱く、なれば痛みも感じる。

 

2)紅茶に生姜を入れるとより温かい

 

  紅茶も熱刺激(43℃以上)と生姜成分ジンゲロール(辛み)が同時に作用し、より温かく感じる

 

3)激辛カレーは冷たいとあまり辛くない

 

  冷えた激辛カレーは、カレーの中の唐辛子の成分カプサイシンの刺激しかないので(熱刺激がない)、あまり辛いとは感じない。

 

4)寒い冬には温まるために、靴下や肌着に唐辛子を入れる

 

 唐辛子成分カプサイシンがTRPV1を活性化し熱感をもたらすとともに、交感神経を介して熱産生も引き起こすことから温まる。

 

5)ミントに触れると本来冷たくなくても、冷たいと感じる。アイスクリームにミントを加えるとより冷たく感じる。

 

  ミントの成分メントールがTRPM8を活性化し、清涼感を感じる

 

6)口の中の傷は治りやすい

 

  口の中の上皮細胞にはTRPV3が多くあり、このTRPV3が口の中の温度で活性化され、治癒を促進する。

 

 重要なのは、2021年ノーベル医学生理学賞受賞研究の温度感受性TRPセンサ―(チャネル)は、それぞれの温度以外の刺激でも活性化するということです。植物成分や痛み、酸、脂質などの複数の刺激(活性化刺激)により活性化され、資料1に示した疾患(関連疾患)や、生命活動の重要な機能に関与しています。

  温度感受性TRPセンサーは、外気の温度変化を感じる皮膚のみでなく、深部体温を感じる細胞にも存在します(発現部位)。すなわち、TRPV1は感覚神経、TRPV2は感覚神経や免疫細胞、TRPV3は皮膚や感覚神経、TRPV4は皮膚、TRPM5は味覚細胞、TRPM2は免疫細胞や膵臓、TRPM8は感覚神経や前立腺、TRPA1は感覚神経や腸管に多く存在します。

 

 特に、免疫細胞にも温度感受性センサーがあるということは、やはり、温度、すなわち加温が免疫細胞の活性化にも重要であることの1つの証と思われます。

 改めて、私たちの体は、温度に左右されることが沢山あり、昔から知らないうちに、生活の中で「温度」が結構生かされていて重要だなと感じます。

なんてったって、寒い冬はやっぱり温かいお風呂

HSP入浴法で芯まで温まるのが最高!と思う次第です。

そして、近い将来、HSPにもノーベル賞が!


No.20210409 温度変化は心と行動を変える

-人は温かさを感じると温かい反応をする-

心理学の有名な話で、温熱に関するとても興味深い話を紹介します。

「温かい飲み物を持つと、相手のことを温かい人間だと感じる」という話です。

オリジナルは有名な科学雑誌Science 2008 年

「Experiencing Physical Warmth Promotes Interpersonal Warmth」に掲載されました。

身体的な温かさを感じると(物理的温かさ)目の前の人のことも優しい、穏やかな温かい人間だと感じてしまう(心理的温かさ)というのです。これには、2 つの実験が紹介されています。

実験1.ホットコーヒーとアイスコーヒー温度で人の評価が変わった。

41 人の大学生にホットコーヒまたはアイスコーヒーのどちらかを手渡しします。

そして、Aという人物の資料を読んでAがどんな性格か

10 項目の評価をしてもらいました。その結果、

*温かいコーヒーではAのことを「やさしい、穏やか」と評価しました。

*冷たいコーヒーではA のことを「やさしくない、利己的」と評価しました。

すなわち、物理的な温かさが人物評価によい影響を与えることが示されました。

 

実験2.ホットパッドとコールドパッド温度で他人に対する行動・感性も変わった。

53 人の別の大学生に製品評価を装って、ホットパッドまたはコールドパッドを渡し評価の後、その報酬として2 つの選択肢を与えました。

1. 自分用のドリンクまたはアイスクリーム券

2. 友達用のドリンクまたはアイスクリーム券

その結果、ホットパッドを渡された参加者は、約54%が友達用を選びコールドパッドでは約75%が自分用を選びました

物理的な暖かさは、報酬の種類に関係なく、個人的な報酬より、友人への(社会的報酬)を選んだのです。

温かさは、人の判断だけでなく、他人に対する行動にも影響を与えることが示されました。

2 つの実験結果から、

“人は温度変化によって、優しくなったり、利己的になったり行動が変わる” ということが示唆されたわけです

デートの時、すかざずホットコーヒーを注文して相手に飲んでもらえば、自分のことをやさしい良い人だと評価がえられるかも!

恋人ゲット! 温かさが、相手の心を開かせるかもしれません。

著者は、身体のどこかの温度が変わると、脳のインスラ(島皮質)という部分で感じ取り、インスラは“温まる”という変化に対して “気分が和らぐ”というように反応すると言っています。最後に著者は、幼児期の母親からの温かい愛が、人間関係における温かさと成人の行動の正常な発達に不可欠だとも述べています。

 

そして、10 年経て、2018 年

オリジナルよりも3 倍以上被験者を増やし、学生以外も対象とし、現実に近い形で追試実験が行われました。

その結果、2018 年の追試実験ではホットコーヒーの効果が得られませんでした------失敗、残念

スモールスケールで効果があってもラージスケールにすると統計学的に効果がでなくなることは、時々あります。

特に、心理学の研究はあまり再現性が高くありません。大人数では個々人の誤差も大きくなります、年齢差(高齢者では熱感受性が鈍い)も出てきます、実験室レベルで実施していたのが大きな部屋で実施すれば集中できないし、雰囲気も違ってきます。

でも、10 年前の結果は結果で、その条件下では正しかったのです。

 

バンダナ先生としては、

実験ではコーヒーをもっていた時間は短時間です。温める時間を長くして温度差をちゃんと感受できれば、成功するのではと期待しています。 ホットコーヒではないが、お風呂に入り湯に浸かると、“ホットする”、あの瞬間、あのホット感は心を優しくしてくれます

 

体が、外気温(20-30℃)から湯温(40-42℃)に浸り、温度変化を感受することにより、著者いわく“インスラ”により気分が和らぐのかもしれません。また、40-42℃の湯に浸かるとエンドルフィン(脳内麻薬)が分泌され、良い気分になったり、痛みが緩和したりすることが知られています(お風呂に入ると腰痛や筋肉痛が和らぐ)。

 

世界中の人がお風呂に入り、優しい気持ちになったら、

戦争やいがみ合いも許せる気持ちになるかもしれない!

やっぱり、戦場にもお風呂タイムが必要だ!

災害の被災地にもまずはお風呂を設置しよう!

 

大げさかもしれないが、お風呂が平和をもたらす一助になるかも知れない!

No.20210205 感情変化の体温マッピング -心は体とつながっている-

幸せを感じよう! 自分はハッピーだと心で思おう! そうすれば体が、全身が温かくなる!


図1. 感情変化と体温マッピング(2013 年 The Atlantic)

冬に必要な免疫力を高めるHSPとHSP入浴法

図1.は、フィンランド、スウェーデン、台湾の700 人のボランティアを対象に、様々な感情の下で「体温」がどのように変化するのかを調査した結果です。感情の変化で体温がかなりはっきり変化しているのがよくわかります------感激!

 

「愛・恋してる」時は下肢を除いて特に顔・胸部・腹部が温かく、「幸福」に感じてる時は頭から手足の先まで全身が温かくなります。

「落ち込んだ」時は、手足の先まで全身が冷たくなります。「悲しい」時は、胸部のみ熱く、手足は冷えます。「怒り・恐怖・嫌悪・誇り」では顔と手と上半身のみに熱が集まります。「驚き・不安・恥らい・嫉妬」では、顔は熱く手足は冷たくなります。

 

“結果”

・感情によって、体温が変わる。(落ち込むと体温が下がって、幸せだと体温が上昇する)

・体温変化は結構、明確に表れる。

・下半身は上半身とは相反するように現れる。

・頭部に熱が行きやすく、下半身は熱が届きにくい傾向がある。

・怒り、恐怖、嫌悪・驚き・嫉妬などでは、顔付近の温度が上がり、呼吸数や、脈拍増加と一致する。

・ポジティブな感情や、対外へ向けた感情が起こった際には体温が上昇する。

・落ち込みといった、極端に内側へ向いた感情が起こった際には体温が低下する。

・国籍が違っても似たような結果が得られたということから、人間の感情は人種や言葉の違いを超えて共通している。

 

写真を見て、「やっぱりそうか、バッチリ当たってる!」と思った人も多いと思います、

最近、“どうやって、心の変化が体の変化(体温変化)につながるのか”という科学的根拠が明らかにされました。

2020 年Science に掲載された名古屋大学の中村先生の「心と体をつなぐ心身相関の仕組み」で解明されました。

脳の中に、心理的なストレスや喜怒哀楽などの情動をつかさどる「心」の領域(大脳皮質)から、「体」の状態を調節する領域(視床下部)へ、ストレス信号を伝達する「心身相関」の伝達路が発見されました。例えば、心理ストレス(心)を受けると交感神経が活性化して、脈拍、血圧、体温が上昇する(体)ことは誰もが経験することです。この脳内の「心の神経回路」「体を調節する神経回路」をつなぐ(心身相関)カギとなる神経回路(DP/DTT 領域にある)の存在と仕組みが、ネズミの実験で明らかにされました。パニック障害・心的外傷後ストレス障害等はストレスや情動が交感神経を活性化する心身相関によって発症するス疾患です。 これらストレス疾患に対する根本的治療法の開発につながる可能性が期待されています。また、がん患者さんの症状緩和のための心理療法、しいては、「病は気から」と言われる現象が心身相関から解明されるかもしれません。

No.20201212  新型コロナ・インフルエンザ・風邪の見分け方

今年の冬は、毎年流行するインフルエンザの心配だけでなく、なかなか収束を見ない新型コロナウィルス(COVID-19)と同時流行する「ツインデミック」の可能性も懸念されています。さらに、風邪にも気を付けなければなりません。新型コロナ感染症も、風邪やインフルエンザなどと同様に「発熱」や「咳」、「倦怠感」などが主な症状で、症状だけでこの3つを区別するのは実際には困難です。発熱するだけで「新型コロナウィルスに感染したのでは」と不安に思う方が多いと思います。

 

下記の新型コロナ・インフルエンザ・風邪の違いを参考にしてください。

・特にひき始めは一般の風邪、インフルエンザ、新型コロナの感染症状は区別がつかないことが多い

・発熱、咳、頭痛、だるさ、筋肉痛の症状は3者で見られる

・新型コロナとインフルエンザはどちらも呼吸器感染症なので、症状が似ている

・息切れ、嗅覚・味覚障害の症状は新型コロナに特徴的と言えるが、必ずみられるというわけではない

・くしゃみ、下痢、鼻水の症状は新型コロナでは少ない

 

原因ウィルスが違う:インフルエンザは、インフルエンザウィルスに、新型コロナは新型コロナウィルスに感染すると発症する。風邪も80%~90%はウィルス感染ですが、風邪の原因ウィルスは特定なものはなく、約10種(ライノウィルス;冬、アデノウィルス;年中、コロナウィルス;冬~春、RSウィルス;11~3月、バレインフルエンザウィルス;3~7月)あると言われている。風邪は、ウィルス以外でも細菌、マイコプラズマ、寒冷刺激でも発症する。

”体を冷やすと風邪をひく”の根拠寒さがライノウィルスに抵抗する免疫力を低下させ、風邪をひくリスクを増大させる

・ワクチンの違い:インフルエンザワクチンを接種したからといって、新型コロナや風邪を予防できるわけではない。それぞれを発症させるウィルスが違うので、2つまたは3つに感染する可能性もある。新型コロナウィルスワクチンに関しては、開発・治験がすすみ、順次認証されつつあり、接種可能となる日も近いが、副作用など心配な点もある。

 

新型コロナとインフルエンザの相違点

・潜伏期が違う:インフルエンザが1~4日、新型コロナが1~14日です。

・症状の持続期間が違う:インフルエンザでは1週間程度で改善するが、新型コロナでは2~3週間以上のこともある。

・感染性の違い:新型コロナウィルス感染症では発症する前にも他の人に感染をうつしてしまうことがあり、発症後に感染性のインフルエンザと大きく違う。

・致死率の違い:インフルエンザ;0.01~0.1%(年間1000万人が罹患し、1000人~10000人が死亡)、新型コロナ;3~5%が死亡

・治療薬の違い:どちらも抗ウィルス剤を使用するが、インフルエンザはタミフル、新型コロナはレムデシビル(WHOは否定的)など開発中

 

No.20201128 冬バージョンHSP入浴法 -2020年11月簡易版-

 冬に備えて、体の芯から温まり、免疫力を高め、ストレスに備える “HSP入浴法” を始めましょう!

1)夏はシャワーだった人も、寒い冬には肩まで浸かり、体の芯まで温まるお風呂入浴が恋しくなります。

2)新型コロナウイルス感染の収束は、目処がつかずwithコロナに対応できる、免疫力を高める入浴法が望まれます。

3)冬場はインフルエンザに好条件です。この季節性インフルエンザや風邪に対処できる入浴法が必要です。

4)長引くコロナストレスによるコロナ欝と自殺の増加、急速な社会変化・AI化でのストレスの予防に役立つ入浴法が必要です。

ヒートショックプロテイン(HSP)とは、

・人をはじめほとんどの生き物が持っている、ストレスから自身を守るタンパク質です。
HSPは、ストレス社会を生き抜いていくために生き物に備わったサバイバルプロテインです。
HSPには大きく4つの作用、①ストレス防御作用②免疫増強作用③分子シャペロン作用(タンパク質の補助・介添え作用)、  

④抗炎症作用があります。

HSPをふやすための入浴法がHSP入浴法で、少し熱めで少し長めの入浴と入浴後の保温が特徴です。

冬に必要な免疫力を高めるHSPとHSP入浴法

No.20201107  HSPにはHSPを!

 何のことだかわりますか?

 人一倍感受性の強いHighly sensitive person(HSP)にはストレスを防ぐHeat shock protein(HSP)予防・対応しよう! ストレスで疲れ、心が折れた時にはお風呂でHSP入浴法を!という意味です。

私は、ヒートショックプロテイン(HSP)の研究者ですが、最近、にわかにハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)HSPが話題になってきました。芸能人や著名人にHighly sensitive person(HSP)の人が多いということで、大変注目を集めています。きっと、みなさんも興味があると思い、両者のHSPについて少し解説したいと思います。

ハイリー・センシティブ・パーソン(HSP)とは、

 1992年アメリカ心理学者Aron先生が考案した言葉で、非常に刺激に敏感すぎる特性を持つ人を言います。

  HSPは気質(生まれつき持った特性)で、病気ではありません。自己肯定感が低く、他人に共感しやすく、自分が悪いと感じやすく、ストレスを抱えて心が疲れやすいので、“うつ”にもつながる可能性があります。

HSPは、脳の扁桃体を中心とした不安の神経回路の反応が高まり易く、前頭葉皮質の抑制が高まり、不安・恐怖の神経回路が過剰活動しやすい状態と言われています。最近ではHSPの人を繊細さんという呼び方で呼ぶこともあるようで、約5人に1人がHSPと考えられています。

  アーロン先生は、4つの特徴(DOSE)に当てはまる人がHSPであると定義しています。

(心療内科医・子育てカウンセラー明橋大二先生著書参照)

1DDepth of processing):深く考える

HSPの人は他の人に比べて感覚データをより深く、かつ徹底的に処理する傾向にあります。

2OOverstimulated):刺激を受けやすい

視覚や聴覚といった五感や、他人の感情・雰囲気などから過剰な刺激を受けやすい性質を持っています。

3EEmotional reactivity and high Empathy):共感力が強く、感情の反応が強い

HSPの人は、他の個体に対する共感力が高く、容易に感情移入しやすい傾向にあります。

4SSensitivity to Subtle stimuli):小さな刺激に対する感受性が強い

ちょっとした変化や刺激に対する反応が強く、ささいな音や匂いが気になる、他人の表情の微妙な変化から感情を読み取るなどの能力に長けています。

 HSPの傾向として、

・自分をせめて否定してしまう

・相手が望む通りにしようとして疲れてしまう。

・小さなミスでも激しく動揺してしまう。

・結果を出そうと張り切りすぎてしまう。

・相手の感情に左右されすぎてしまう。

 

HSPは悪いことばかりでなく、

ポジティブにとらえていくと逆に、HSPが強みとなる場面はたくさんあります。

自分がHSPかもと考えた方は、自己分析をして自分のことを理解し、そのうえで、それを個性と捉えて、活かしてみてはどうでしょうか。

  HSPの長所

  これまでHSPは「人よりも敏感な生まれつきの気質」と説明したので、短所のように思えるかもしれませんが、素晴らしい長所でもあります。

 

・本質的なものを探究することができて、多角的に物事を捉えることができる

・相手の小さな変化に気づくことができ、相手のために行動ができる

・映画や音楽などでも作品に対して深く感動することができる

・相手の気持ちに寄り添うことができる

・周囲の状況をよく観察してるので、環境変化に対応しやすい

  このような長所を活用し、仕事や交友関係で能力を活かすことができるでしょう。

 

  研究職、芸術家、介護・医療・教職関係、カウンセラーなどの職業に向いている傾向にあると言われています。

 

  HSPが社会生活を送る上で必要なこと(HSPの生きにくさの軽減)

1.境界線を引く:人は人、自分は自分という境界線(物理的境界、心理的境界、社会的境界)を引く。

2.休息を取る:疲れやすいのは、心の疲れの蓄積。意識して休息を取る(嫌なこと・疲れることだけではなく、楽しいことも刺激が多いので、疲れます)。

自分はHSPかも?と思ったら、最後に記載した日本版HSPスケールHSPS-19でチェックしてみてください。

 

ちなみに、バンダナ先生は、Yesが10個でぎりぎりHSPの可能性あり。職業は研究者でHSPにぴったり、愛知医大では、細胞やねずみやうさぎとの会話くらいで、ヒトとの会話のない日も希ではなかったし、なんといっても極めつけは、大学受験の失敗はまさしくHSP的。空気が読めないと(自分としては正義を貫いてきたつもり)言われ、多くの失敗を重ね今に至る。

自分もHSP(かもしれない)」「子供がまさにそんな感じ!」と感じたかたは、

是非、下段のヒートショックプロテイン(HSP)を読んで、HSP入浴法を試してください。

 

ヒートショックプロテイン(HSP)とは、

1962年イタリア遺伝子研究所Ritossa先生らが初めて報告しました。人をはじめほとんどの生き物が持っている、ストレスから自身を守るタンパク質のことです。
 どんな生き物もストレスを受けますが、ストレス社会を生き抜いていくために生き物に備わったサバイバルプロテインです。HSPには大きく4つの作用、①ストレス防御作用②免疫増強作用③分子シャペロン作用(タンパク質の補助・介添え作用)④抗炎症作用があります。

このHSPは健康の2大柱であるストレスを防ぐ+免疫力を高める作用を有しており、健康に大いに貢献します。また、自分で必要な時にお風呂で(HSP入浴法HSPを増やすことができるので、みなさんの健康に大いに役立てて欲しいとHSPHSP入浴法の普及活動を行っています。(詳細は伊藤要子のHPの内容をご覧下さい)

 

 HSPは脳(海馬)の神経細胞をストレスから守ることも知られており、“うつ”の予防・治療に有効であることが、動物実験、臨床研究で実証されています。HSPのみなさん“うつ”になる前に、HSP入浴法で予防しましょう!

HSP入浴中には、大声で泣いてもいいんです、より効果があります)

 

**脳の海馬は非常に繊細な部位で、ストレスを受け傷害されやすい場所です。記憶を司る重要な役割を担います

HPSを見分ける19の質問

(アーロン先生らが開発したチェックリストをもとに作成された日本版HSPスケールHSPS-19のアレンジ版)

 

1.   強い刺激に弱い?

2.   人に影響されやすい?

3.   痛みを感じやすい?

4.   ひとりの時間がないとムリ?

5.   不快な刺激にうんざり?

6.   とりで考えることが好き?

7.   大きな音は嫌い?

8.   よくアートや音楽で感動する

9.   自分らしくありたい?

10.驚きやすいタイプ?

11.急ぎ が大の苦手?

12.いっぺんに頼まれるのは嫌い?

13.周囲がせわしないと不快になる?

14.職場の変化で混乱する?

15.細かくて繊細なものが好き?

16.いっぺんに起こると不快?

17.混沌とした状況は嫌い?

18.肝心なところで緊張する?

 

19.子どものときから敏感だった?

 

10個以上YesがあればHSPの可能性があることになります(厳密な診断ではありません)。

Yesの数が少くても、それぞれが非常に強く当てはまっている場合は、HSPの可能性が高まるそうです。

 

No.20200904  泣いてもいいんですよ!

大人になると、なんとなく、「泣くこと」「カッコ悪い」とか、「後ろめたさ」を感じるようになり、涙が出るのをぐっと我慢したことが、みなさんもあるのではないでしょうか。

 

 

前回のブログ “涙は甘いか、塩っぱいか” で少し述べましたが、涙の種類には3種類(基本的な涙、反射的な涙、感情の涙)あり、感情の涙は、ヒトだけが流す涙です。今回は、この感情の涙についてのメカニズムとその効果についてです。

 

 映画、ドラマ、スポーツなど鑑賞していて、ついじわじわと涙腺が押されて、涙が出てくることありますよね。

 

*子供と一緒にテレビの「日本昔ばなし」を見ていて、長男が、泣きながら、「お母さん、死なないでね」と言った時、一緒に泣いてしまった。

 

1.   涙には以外な効果がある。

 

 ヒトだけが流すと言われている感情的な涙には、生理的に流れる涙(基本的な涙や反射的な涙)とは、違いがある。

 

2.   なぜ、感動すると泣くのか

 

 1)東邦大学医学部名誉教授有田秀穂先生の実験

 

   涙を誘う映画を見た被験者の脳の活動状況を調べた結果、涙を流す前には必ず、額のほぼ中央の「正中前頭野」の活性が急激に高まった。「正中前頭野」の特に、前頭前野は「共感」に関係する「共感脳」(第3の目)がある。